マイクロ
カウンセリング

マイクロカウンセリングの階層構造

相談援助面接技法の体系的理解

面接の「聴き方」を、一つひとつの技法に分けて、やさしいものから難しいものへ積み上げる形に並べ直した訓練モデルです。アイビイ(Ivey, A. E.)が1960年代に体系化しました。
どの技法を、面接のどの場面で、何のために使うのか。技法×段階×目的の3つでとらえると、全体が見通せるようになります。

目次

マイクロカウンセリングとは

アメリカの心理学者アイビイ(Ivey, A. E.)が1960年代に体系化した、面接技法の訓練モデルです。それまで「経験を積むしかない」と語られがちだった聴き方を、数えられる小さな技法に分解し、練習できるようにしました。

特徴は、技法を階層(ピラミッド)の形に並べたことです。土台にあたる技法から順に身につけ、上へ積み上げていきます。下の段ができていないのに上の段だけ使おうとすると、うまくいきません。

マイクロカウンセリングの階層表。下が広く上が狭い台形を11の段に分けた図。下から順に、かかわり行動(文化的に適合した視線の位置、言語追跡、身体言語、声の質)、クライアントの観察技法、開かれた質問・閉ざされた質問、はげまし・いいかえ・要約、感情の反映、意味の反映。ここまでが下位技法で、左側に「基本的かかわり技法」のかっこが付き、質問技法から感情の反映までの3段には右側に「基本的傾聴の連鎖」のかっこが付く。青い横線をはさんで上が上位技法(高度な技法)で、下から順に、焦点の当て方(文化的に、環境的に、客観的に/クライアントに、問題に、他の人に、私たちに、面接者に)、積極技法(指示、論理的帰結、解釈、自己開示、助言、情報提供、説明、教示、フィードバック)、対決(矛盾、不一致)、技法の連鎖および面接の構造化、いちばん上が技法の統合。
マイクロカウンセリングの階層表(下の段が土台。下から順に積み上げます)図を押すと、別のタブで大きく開きます。
それぞれの段が、どんな技法か
技法どんな技法か
上位(統合)技法の統合面接全体を見通して、技法を選び、組み合わせる
上位技法の連鎖・面接の構造化技法をつなげて、面接の流れそのものを組み立てる
上位対決矛盾や食い違いを明確にして、気づきを促す
上位積極技法情報提供・助言・自己開示・論理的帰結・指示・フィードバックなど、援助者から働きかける
上位焦点の当て方話のどこ(本人・他者・環境)に光を当てるかを決める
下位意味の反映言葉の奥にある価値観や意図を汲みとって返す
下位感情の反映相手の気持ちを言葉にして返す
下位はげまし・いいかえ・要約受けとめ、言い直し、まとめて整理する
下位質問技法開かれた質問と閉ざされた質問を使い分ける
下位観察技法表情・姿勢・声の変化をとらえる
下位(土台)かかわり行動視線・姿勢・声の調子・言語追跡で「聴いています」を伝える

なぜ、下から積むのか

ピラミッドの形そのものに意味があります。ここが分かると、一つひとつの技法の読み方が変わります。

ピラミッドは、下が広くて上が狭い形をしています。建物と同じで、土台をつくらないと上は載りません。マイクロカウンセリングも同じで、下の段から順に積み上げます。

そして、この階層は難しさが上がっていくだけの並びではありません。真ん中の境界線をはさんで、面接の主役が入れ替わります

境界線の下(基本的かかわり技法)
クライアントが主役の段階です。ここでやることは、クライアントの言葉とニーズを引き出すこと。援助者は、話しやすい空気をつくる側にまわります。
「この人は話しやすいな」「ちゃんと聴いてくれているな」——そう感じてもらえて、はじめて本人が語りはじめます。語ってもらうところから始まる、というのが下半分の意味です。
境界線の上(高度な技法)
援助者が主役の段階です。下で引き出した話をふまえて、ここではじめてクライアントに影響を与えていきます
考え方のくせ、ものの見方の傾向、行動の習慣——そうしたものに働きかけるのが、上半分の技法です。

「傾聴は大事」とよく言われます。そのとおりなのですが、傾聴は、対人援助職の心構えではありません

基本的かかわり技法① 信頼をつくる土台

まず「この人は聴いてくれる」と感じてもらうための技法です。

かかわり行動
言葉以外のふるまいで、関心と受容を伝える技法です。視線の位置、姿勢、声の調子、そして相手の話についていく言語追跡(話題を勝手に変えない)の4つが柱になります。
例:静かにうなずきながら、相手の言葉を待つ。
※ 視線の合わせ方は文化によって受け取られ方が違うため、相手に合わせた形にします。
観察技法
表情・姿勢・言葉づかい・声のトーンなどの変化をとらえる技法です。「いま」の様子そのものより、どこで変わったかを見ます。
例:クライアントの表情が曇ったタイミングに注目する。
質問技法
開かれた質問閉ざされた質問を使い分ける技法です。
開かれた質問(自由に答えられる)… 「最近の生活で、気になることはありますか」
閉ざされた質問(はい・いいえや短い事実で答える)… 「昨日も同じことがありましたか」
開かれた質問は話を広げ、閉ざされた質問は事実を確かめたり、話しすぎて疲れている人の負担を軽くしたりするときに使います。どちらが優れているという話ではありません。

基本的かかわり技法② 共感的理解を示す

受けとめたことを、言葉にして返す技法です。

感情の反映
クライアントの気持ちを言葉にして返します。
例:「それはつらい経験でしたね」
ねらいは、本人が自分の感情に気づき、「受けとめられた」と感じられるようにすることです。
意味の反映
その気持ちの背景にある価値観や意図を汲みとって伝えます。
例:「それは“信頼が壊れた”という感覚なのですね」
ねらいは、本人の深いところにある考え方や信念を、はっきりさせることです。

基本的かかわり技法③ 整理と支持

話を整理し、話しやすさを支える技法です。

要約
話の要点を整理して返します。
例:「つまり、家族に迷惑をかけたくないという気持ちですね」
面接の節目や終わりに、内容をまとめるときに使います。
いいかえ
同じ内容を別の表現で言い直します。
例:「自分の力でやり遂げたいと思っているのですね」
理解が合っているかを確かめると同時に、本人に新しい見方を差し出すことにもなります。
はげまし
うなずき、あいづち、短い言葉で受けとめ、安心感を伝えます。
例:「よく話してくださいました」
本人が自分のことを話しやすくなるよう支えます。

焦点の当て方

話のどこに光を当てるかを、意識して選ぶ技法です。ここから上位技法になります。

内的焦点(本人)
クライアント自身の感情・考え・行動に焦点を当てます。内面を探り、自己理解を深めます。
例:「そのとき、あなたはどんな気持ちでしたか」
対人焦点(他者)
家族・友人・支援者など、他者との関係に焦点を当てます。関係のパターンやお互いの影響をはっきりさせます。
例:「ご家族は、そのことをどう受け止めていますか」
環境焦点
制度・地域の資源・文化的な背景に焦点を当てます。その人を取り巻く環境の要因を理解します。
例:「利用できる地域のサービスについて、考えてみましょう」

積極技法

援助者の側から働きかけ、クライアントに影響を与える段階の技法です。

情報提供
制度や資源について知らせます。
例:「地域包括支援センターに相談すると、制度の利用がスムーズです」「介護保険の申請には、主治医の意見書が必要になります」
※ 押しつけにならないよう気をつけます。
助言
こうしてはどうか、と提案します。
例:「まずは一度、専門機関に相談してみることをお勧めします」「ご家族と話し合う機会を持つことも大切かもしれません」
※ 相手の心の準備ができているかを見極めます。
自己開示
援助者自身のことを、必要な範囲で伝えます。
例:「私も同じような不安を感じたことがあります」
※ 共感を示し、関係を深めるために使います。自分の話が中心にならないよう注意します。
論理的帰結
いまの行動を続けるとどうなるかを、一緒に見通します。
例:「早めに相談することで、選択肢が広がるかもしれません」「このまま一人で抱え込むと、心身の負担が大きくなる可能性があります」
※ 脅しにならないように伝えます。
指示
具体的な行動を提案します。
例:「次回までに、生活リズムを記録してみてください」「まず深呼吸をして、落ち着いてから話してみましょう」
フィードバック
観察した事実を、そのまま伝えます。
例:「今日は以前より表情が明るくなっていますね」「この1か月で、行動が具体的になってきていますね」

対決

矛盾や食い違いを明確にして、本人の気づきを促す技法です。

「対決」という言葉は強く聞こえますが、言い負かすことではありません。本人の中にある食い違いを、そっと目に見える形にして返す技法です。

例:「助けを求めているとおっしゃっていますが、誰にも相談されていないのは、なぜでしょうか」

言動の矛盾
「〜と言っているが、実際には〜している」という、言葉と行動の食い違いを取り上げます。
感情と行動の不一致
「つらいと言いながら、笑顔を見せている」など、感情の表れ方と行動の食い違いをはっきりさせます。
理想と現実のギャップ
「〜したいと言っているが、〜していない」という、望みと現実の差を示します。

技法の統合

面接全体を見通して、技法を組み立てる段階です。

複数の技法を、面接の段階に合わせて構造的に使い分けることです。
例:導入で傾聴し、展開で焦点を絞り、終結で要約してまとめる。

面接の段階と、主に用いる技法
面接の段階主に用いる技法ねらい
導入期かかわり行動、質問、感情の反映信頼をつくり、安心して話せる場にする
展開期意味の反映、焦点の当て方、積極技法、対決問題をはっきりさせ、気づきを促す
終結期要約、いいかえ、情報提供内容を整理し、これからの見通しを確かめる

3つの軸で整理する

階層・段階・目的の3つを重ねて見ると、全体が見通せます。

1.階層でとらえる
基本的かかわり技法 → 焦点の当て方 → 積極技法・対決 → 技法の統合。
下の段から順に習得し、統合していきます。
2.面接の流れでとらえる
導入期(信頼をつくる) → 展開期(問題を整理する) → 終結期(見通しを確かめる)。
それぞれの段階に合った技法を選びます。
3.目的でとらえる
その技法を「何のために」使うのか。同じ質問でも、話を広げたいのか、事実を確かめたいのかで意味が変わります。

国家試験ではどう問われるか

面接技法は、「ソーシャルワークの理論と方法」「ソーシャルワークの基盤と専門職」「心理学と心理的支援」などで、繰り返し問われている分野です。

ほかの資料とのつながり

参考にした資料

この資料は、管理人(ばっふぁ)が講義で使っている資料をもとに、サイトで読める形に組み直したものです。
原資料には年度ごとの出題番号を並べた表がありましたが、番号がその年の科目の範囲と合わなかったため、番号は載せず、問われ方だけを残しました。