第38回(令和8年2月実施) 心理学と心理的支援
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問題文は「第38回社会福祉士国家試験 試験問題」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)より、出題当時の文言のまま掲載しています。正答は同センター公表の「合格基準及び正答」に基づきます。解説は管理人(ばっふぁ)が独自に作成したものです。
問題 7
事例を読んで、次のうち、現在のAさんに生じている状況を説明する現象として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(25歳)は、1年半前、バスの中で息苦しくなり、このまま心臓が止まってしまうのではないかと恐怖に襲われる経験をした。その後、バスに乗ると強い恐怖を感じるようになってしまい、バスに乗れなくなってしまった。病院を受診したところ、身体的な異常は認められなかった。しかし、現在では電車などのバス以外の乗り物にも恐怖を感じるようになってしまった。
- 1強化
- 2消去
- 3般化
- 4弁別
- 5馴化
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正答3
(条件づけ)の基本用語を、事例に当てはめて選ぶ問題です。
・強化…行動の結果として刺激が加わる、または除かれることにより、その後その行動が増えること。正の強化と負の強化がある
・消去…条件づけが成立した後、対提示をやめることで反応が弱まり、やがて消えること
・般化…条件づけされた刺激と似た別の刺激にも、同じ反応が起こるようになること
・弁別…似た刺激の違いを区別し、特定の刺激にだけ反応するようになること
・馴化…同じ刺激を繰り返し受けるうちに、反応が弱まっていくこと
Aさんは、バスで恐怖を経験し(条件づけ)、その後バス以外の電車などの乗り物にも恐怖が広がっています。「似たものに広がった」という点が答えの決め手です。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
強化は、行動の結果として刺激が加わる、または除かれることで、その後その行動が起こりやすくなることである。正の強化と負の強化がある。本事例の主題は恐怖反応が似た刺激へ広がる般化である。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
消去は反応がだんだん弱まって消えていく現象です。Aさんの恐怖はむしろ広がっており、逆の方向です。
- 選択肢3(正答)
○ 適切です
般化は、条件づけされた刺激に似た別の刺激にも同じ反応が生じることをいいます。バスで生じた恐怖が、電車などほかの乗り物にも広がった経過がこれに当たります。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
弁別は、異なる刺激に対して反応が分かれることである。本事例ではバス以外にも恐怖反応が広がっているので般化に当たる。バスと電車の種類そのものを認識できない、という意味ではない。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
馴化は、同じ刺激に慣れて反応が弱まることです。Aさんは慣れるどころか、恐怖の対象が増えています。
問題 8
次の記述のうち、確証バイアスが生じている事例として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1利用者が集団活動を拒否する理由として、活動の魅力が低いことではなく、その利用者が集団活動を嫌いな人であるからと考えた。
- 2感染症対策を特にしなくても、自分は感染しないだろうと楽観視してしまった。
- 3利用者の転倒事故が起きた後に、前から事故が起きそうだったとわかっていたと発言する人が何人か現れた。
- 4ちょっと嫌いな人だという第一印象をもった相手について、いやな行動ばかりが目について、ますます嫌いになってしまった。
- 5自分の主張は多数派だと考えていたが、実際にアンケート調査をしたら賛成する人は少数であり、意外だった。
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正答4
確証バイアスとほかの認知の偏りを区別できるかを問う問題です。
確証バイアスとは、自分がいったんもった考えや予想を裏づける情報ばかりに目が向き、それに反する情報を見落としたり軽く扱ったりする傾向をいいます。
選択肢には、よく似たほかのバイアスが並んでいます。
・基本的な帰属の誤り…行動の原因を、状況ではなくその人の性格に求めすぎる
・楽観バイアス…悪いことは自分には起こらないと考える
・後知恵バイアス…結果を知った後で「予想できていた」と思い込む
・合意性の過大視…自分の考えは多数派だと思い込む
「最初の見立てに合う情報ばかり集めているか」を基準に選びます。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
これは基本的な帰属の誤り(対応バイアス)の例です。行動の原因を、活動の魅力という状況要因ではなく、その人の性格に求めています。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
これは楽観バイアスの例です。危険は自分には及ばないと考える偏りです。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
これは後知恵バイアスの例です。結果を知った後になって、初めから分かっていたと感じる偏りです。
- 選択肢4(正答)
○ 適切です
「嫌いな人だ」という第一印象を裏づける行動ばかりが目につき、それに反する行動には目が向かなくなっています。これが確証バイアスです。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
これは自分の意見が多数派だと思い込む合意性の過大視(フォールス・コンセンサス効果)が、調査によって外れた例です。
問題 9
次の記述のうち、1歳頃の子どもにおける一般的な言語発達の状況として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1「アー」、「クー」といった喉を鳴らすような発声をするようになる。
- 2「バババ」といった明瞭な音を発声するようになる。
- 3「ママ」、「マンマ」などの1単語を発するようになる。
- 4「パパ ダッコ」、「コレ ワンワン」などの2単語を文のように話すようになる。
- 5「ボク ハ イヤ」などの助詞を使った文を話すようになる。
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正答3
乳幼児期の言語発達の順序を押さえているかを問う問題です。
おおよその流れは次のとおりです。
・クーイング(「アー」「クー」など、喉を鳴らすような発声)…生後2〜3か月
・喃語(「バババ」など、子音と母音を繰り返す明瞭な音)…生後6か月頃
・初語(意味のある1単語)…1歳頃
・二語文(「パパ ダッコ」など)…1歳半〜2歳頃
・助詞を使った文…3歳頃
言語発達にはおおむね共通する経過がありますが、時期や現れ方には個人差があります。年齢は目安として捉え、本問では意味のある初語が1歳頃に現れるという代表的な経過を選びます。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
これはクーイングで、生後2〜3か月頃にみられる発声です。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
「バババ」のように子音と母音を繰り返す明瞭な音は喃語で、生後6か月頃からみられます。
- 選択肢3(正答)
○ 適切です
意味のある1単語(初語)を話し始めるのは1歳頃です。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
二語文を話すようになるのは1歳半から2歳頃です。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
助詞を使った文を話すのは3歳頃です。
問題 10
次の記述のうち、アントノフスキー(Antonovsky, A.)が定義した首尾一貫感覚(SOC:Sense of Coherence)の説明として、正しいものを2つ選びなさい。
- 1疾病リスクを特定し、その低減を目的とした理論の一つである。
- 2自分に起こる出来事や状況が理解可能であり、予測可能であるという感覚を含んでいる。
- 3汎適応症候群の一つとして経験される感覚である。
- 4困難なことが起きたら、自分には対処できないというあきらめの感覚である。
- 5自分の人生や自分が経験することには意味があるという感覚を含んでいる。
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正答2・5
アントノフスキーの首尾一貫感覚(SOC)を理解しているかを問う問題です。
アントノフスキーは、「なぜ人は病気になるのか」ではなく「なぜ人は過酷な状況でも健康でいられるのか」という向き(健康生成論)から研究し、その鍵となる感覚をSOCと名づけました。
SOCは次の3つの感覚からなります。
・把握可能感…自分に起きることは筋道が通っていて、理解でき、見通しが立つという感覚
・処理可能感…何とかなる、何とかやっていけるという感覚
・有意味感…自分の人生や経験には意味があり、取り組む価値があるという感覚
この3つのどれかを言い表している選択肢を選びます。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
誤りです。疾病リスクを特定して減らそうとするのは、病気の原因を探す疾病生成論の考え方です。SOCは、その反対に健康を保つ力に注目する健康生成論から生まれた概念です。
- 選択肢2(正答)
○ 適切です
正しいです(正答)。これは把握可能感の説明です。自分の身に起きる出来事が理解でき、予測できるという感覚を指します。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
誤りです。汎適応症候群は、セリエが示したストレス反応の経過(警告反応期・抵抗期・疲憊期)のことで、SOCとは別の概念です。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
誤りです。SOCの処理可能感は「何とかなる」という感覚であり、あきらめとは正反対です。
- 選択肢5(正答)
○ 適切です
正しいです(正答)。これは有意味感の説明です。自分の人生や経験に意味があるという感覚で、SOCの3要素の中でも中心とされます。
問題 11
事例を読んで、A社会福祉士の対応に関する次の記述のうち、「動機づけ面接」の方法を用いて、クライエントのデイケアへの参加の動機づけを高める対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Bさん(40歳、男性)は、うつ病であったが症状は軽快し、2週間前から復職プログラムを実施する精神科デイケアに通っている。しかし、これまで10日のうち遅刻が8日、欠席が1日であった。デイケアスタッフのAがBさんと面談することとなり、Bさんの話を傾聴すると「毎日、遅刻しないで参加したいが、一方で参加したくない気持ちもあり、アラームで目が覚めてからベッドでぐずぐずしてしまい、遅刻してしまった」と話した。「二つの気持ちの間で揺れているのですね」と応答した後で、Aは、Bさんが目覚めた後に早めに行動することへの動機づけを高める働きかけを試みることにした。
- 1「もう少し早く寝るとよいと思いますよ」
- 2「なぜベッドからなかなか起きることができないのだと思いますか」
- 3「そのことばかりを考えていても仕方がありません」
- 4「このまま遅刻が続くと、復職は難しくなってしまいますよ」
- 5「目が覚めて、すぐに行動することができたら、どんな良いことがあると思いますか」
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正答5
動機づけ面接の考え方を、具体的な言葉かけで選ぶ問題です。
動機づけ面接(ミラーとロルニック)は、変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちの両方(両価性)を抱えている人に対し、本人の中にある「変わりたい」という言葉(チェンジトーク)を引き出していく面接法です。
大切にすることと、避けることがはっきりしています。
・大切にすること…本人の言葉を引き出す、変化した先の良い面を本人に語ってもらう
・避けること…指示する、説得する、警告する、原因を問い詰める
Bさんは「遅刻しないで参加したいが、参加したくない気持ちもある」と、まさに両価性を語っています。Aは「早めに行動することへの動機づけを高める」働きかけを試みる場面です。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
「〜するとよい」という助言は、支援者が答えを与える働きかけです。動機づけ面接では、本人の中から言葉を引き出すことを重視します。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
「なぜできないのか」と原因を問う質問は、Bさんに言い訳を探させ、変わりたくない気持ちのほうを語らせてしまいがちです。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
本人の悩みを打ち切る応答であり、両価性に寄り添う姿勢から外れています。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
「このままでは困ったことになる」という警告は、不安をあおる働きかけです。動機づけ面接が避ける対応の代表です。
- 選択肢5(正答)
○ 適切です
変化した先にどんな良いことがあるかを本人に語ってもらう質問で、チェンジトークを引き出す典型的な問いかけです。
問題 12
次の記述のうち、発達障害のあるAさん(10歳、男性)に対して、応用行動分析(ABA:Applied Behavior Analysis)に基づく支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1Aさんの多動の背景には、無意識の欲求があると考え、自由連想法を行う。
- 2Aさんの支援に関わる職員に生じている逆転移への対応を優先する。
- 3Aさんの身体に硬さが現れているようであれば、リラクゼーションを行う。
- 4Aさんの家族を対象としたカウンセリングを行う。
- 5Aさんの行動とAさんの支援に関わる職員の対応との関連性について明らかにする。
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正答5
応用行動分析(ABA)に基づく支援がどのようなものかを問う問題です。
応用行動分析は、行動をその人の心の内側ではなく、環境とのやりとりの中で捉えます。基本の枠組みは次の3つの組み合わせ(三項随伴性)です。
・先行事象(A)…行動の直前に何があったか
・行動(B)…実際に起きた行動
・結果(C)…行動の直後に何が起きたか
行動の原因を無意識や性格に求めるのではなく、「どんな場面で起こり、その後どう対応されているか」を観察し、環境の側を変えることで行動を変えていきます。周囲の関わり方に目を向けている選択肢を選びます。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
自由連想法は精神分析の技法です。無意識の欲求に原因を求める考え方は、行動と環境の関係に注目する応用行動分析とは異なります。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
逆転移は精神分析で用いられる概念で、支援者の側に生じる感情の動きを指します。応用行動分析の枠組みではありません。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
リラクゼーションは緊張を和らげる方法ですが、Aさんの行動と環境の関係を分析するものではありません。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
家族へのカウンセリング自体は有用な場合もありますが、応用行動分析に基づく支援の中心ではありません。
- 選択肢5(正答)
○ 適切です
Aさんの行動と、周囲の職員がどう対応しているかとの関連を明らかにする作業は、三項随伴性の分析そのものです。
出典
- 問題文:「第38回社会福祉士国家試験 試験問題 心理学と心理的支援」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
- 正答:「第38回社会福祉士国家試験の合格基準及び正答について」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
- 試験センター「過去の試験問題」の「過去問題利用にあたっての留意事項等」に基づき掲載しています。