パールマンの
問題解決アプローチ
問題解決アプローチ
パールマンの問題解決アプローチ
ソーシャルワークにおける実践モデル
1957年にヘレン・ハリス・パールマンが提唱した実践モデルです。人は生まれてから死ぬまで問題解決の連続の中で生きる存在だと捉え、クライアントを問題解決の主体として位置づけました。
MCOモデル・6つのPモデルという枠組みと、そこから生まれた課題中心アプローチまでをまとめています。
目次
問題解決アプローチとは
ヘレン・ハリス・パールマンが1957年に著書『ソーシャル・ケースワーク 問題解決の過程』で提唱した実践モデルです。
- 折衷理論 … 診断主義と機能主義を統合したもの
- 人間観 … 人は生まれてから死ぬまで、問題解決の連続の中で生きる存在
- 主体性 … クライアントを問題解決の主体として捉える
- 役割 … ソーシャルワーカーは、それを支援する役割
| 年代 | アプローチ | 主な提唱者 |
|---|---|---|
| 1910年代 | 診断主義アプローチ | リッチモンド |
| 1930年代 | 機能主義アプローチ | ランク、ロビンソン |
| 1950年代 | 問題解決アプローチ | パールマン |
MCOモデルとワーカビリティ
問題解決の効果を高める3つの要素です。
- M:Motivation(動機づけ)
- 問題に取り組む意欲。変化への意欲や、クライアントが自ら問題解決に向かう姿勢のこと。
- C:Capacity(能力)
- 知識、スキル、経験など、問題解決に必要な対処能力や資質。
- O:Opportunity(機会)
- 機関によって提供される支援、利用可能な社会資源や環境的条件。
6つのPモデル
- 1. Person(人)
- 問題を自覚しているクライアント。身体的・心理的・社会的側面をもつ全体的存在であり、そのパーソナリティは絶えず変化しています。
- 2. Problem(問題)
- クライアントが自覚している問題。食や住居の欠乏、家族関係、心理的サポートなど、社会的機能に影響を与えるもの。
- 3. Place(場所)
- 社会福祉機関や施設。物質的援助や心理的支援などのサービスが提供される場となります。
- 4. Process(過程)
- 問題解決に向けた一連の協働的な関わり。関係構築から解決策の実行、終結までの段階的な展開を指します。
- 5. Professional(専門家)
- ソーシャルワーカー。クライアントが自分の力で問題に対処できるよう支援する役割を担います。
- 6. Provisions(制度)
- 社会資源。問題解決に必要な制度的支援や資源の提供、活用を指します。
重要な実践技法
- ワーカビリティ(Workability・取り組む力)
- クライアントが問題を解決しようとする動機や、支援機関と効果的に関わる能力のこと。「ある一時点における、問題と施設に対する力動的な関係」と定義されます。
構成要素は、動機づけ(M)、能力(C)、機会(O)、変化への準備性です。 - 部分化(Partialization・小分けにする)
- 複雑な問題を細分化し、扱いやすい単位に分けて一つひとつ取り組む技法です。
バイステックの7原則との関連
1957年の同時期に登場し、相互補完的な関係にあります。ワーカビリティを高める行動指針として活用されます。
| バイステックの7原則 | パールマンのアプローチとの関連 |
|---|---|
| 1. 個別化の原則 | Person(人)の個別性の尊重 |
| 2. 意図的な感情表出の原則 3. 統制された情緒的関与の原則 | Problem(問題)の明確化 Professional(専門家)の役割遂行 |
| 4. 受容の原則 5. 非審判的態度の原則 6. 自己決定の原則 | ワーカビリティの向上 → Process(過程)の質の向上 |
| 7. 秘密保持の原則 | 援助関係の信頼性の確保(Place/Professional) |
7つの原則それぞれの中身は、バイステックの7原則の資料にまとめてあります。
まとめと現代への継承
- 理論的貢献
- 診断主義と機能主義を統合し、クライアントを「問題解決の主体」として捉える視点を確立しました。
- 実践モデル
- MCOモデル(動機・能力・機会)と6つのPモデルにより、具体的で構造的な支援の枠組みを提供しました。
- 現代への影響
- ストレングス視点やエンパワメントアプローチなど、現代ソーシャルワーク理論の基盤となりました。
課題と展開
- 期間設定の欠如
- パールマンのアプローチは「過程」や「部分化」を重視しましたが、解決までの具体的な「期限」を設定する視点が弱かったとされます。
- 支援の長期化(ドリフト)
- 終わりが見えない長期化(ドリフト)に陥りやすく、「プロセスそのものが目的化してしまう」という批判が、新たなモデルへの転換点となりました。
課題中心アプローチの誕生
1970年代、リード(Reid)とエプスタイン(Epstein)は、パールマンの「部分化」を発展させ、短期集中的なモデルを提唱しました。
- 1. 計画的な短期性(Time-Limited)
- 「全8回〜12回」「3か月以内」など明確な期限を設定します。終わりを意識することで動機づけを高めます。
- 2. 標的課題(Target Problem)
- クライアント自身が認識し、「解決したい」と望む具体的な問題に焦点を絞ります。
パールマンから課題中心アプローチへ
パールマンが築いた「クライアントの主体性」の基礎に、「期間」と「行動」の構造を加えた進化形です。
| 比較項目 | 問題解決アプローチ(パールマン) | 課題中心アプローチ(リード等) |
|---|---|---|
| 焦点 | プロセス(過程) 自我機能やワーカビリティの強化 | タスク(課題) 具体的な問題解決行動の実行 |
| 期間設定 | 無限定(Open-ended) 明確な期限を設けない傾向 | 期間限定(Time-limited) 計画的な短期介入 |
| 問題の扱い | 部分化(Partialization) 取り組みやすい部分から扱う | 標的課題(Target Problem) クライアントが望む課題に限定 |
この資料は、管理人(ばっふぁ)が講義用に作成したものです。
※ 提唱者の名は「バイスティック」とも表記されますが、このサイトでは「バイステック」で統一しています。