第38回(令和8年2月実施) 社会福祉の原理と政策

書籍の中の文字や単語、文章を選択すると、その場でAI検索に行くことができます。

問題文は「第38回社会福祉士国家試験 試験問題」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)より、出題当時の文言のまま掲載しています。正答は同センター公表の「合格基準及び正答」に基づきます。解説は管理人(ばっふぁ)が独自に作成したものです。

問題 19

次の記述のうち、イギリスのスピーナムランド制度の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 1救済を求めて都市部に集中する貧民を分散するために、生まれ故郷の教区へ強制的に送還した。
  2. 2救済を申し込んだ貧民の労働能力の有無をテストするために、労役場を活用した。
  3. 3労働能力のある貧民が雇用されるまでの間は自宅に待機させ、貧民救済委員会による救済を施した。
  4. 4最低賃金制度がない状態で、パンの価格と家族の大きさによる基準と賃金との差額を賃金補助したため、賃金の引き下げ圧力を生むとともに、救貧税負担の増大を招いた。
  5. 5救済を受ける貧民の救済水準は、独立自活している最下層の労働者の生活水準を下回るものとした。
正答・解説を見る

正答4

※ 法改正等による補足

スピーナムランド制度は1795年のイギリスの救貧制度です。現在の給付付き税額控除やとは、目的、対象、算定方法、労働法制などが異なります。賃金不足を補うという類似点だけで、同じ制度や直接の制度的継承と捉えないようにします。

イギリスの救貧制度の流れの中で、スピーナムランド制度がどの位置にあるかを問う問題です。

年代順に並べると次のようになります。
・1601年 エリザベス救貧法…救貧の責任を教区に置いた
・1662年 定住法(居住地法)…救済を求めて流入する救貧負担となるおそれのある人を法定の定住地の教区へ送り返す仕組みを設けた。定住資格は出生だけで決まるものではない
・1722年 労役場テスト法…労役場に入ることを救済の条件とした
・1782年 ギルバート法…労働能力のある貧民には、労役場ではなく院外での救済(就労あっせん)を行った
・1795年 スピーナムランド制度…パンの価格と家族の人数から算出した基準に賃金が満たない場合、その差額を救貧税から補った
・1834年 新救貧法…劣等処遇の原則(救済水準は最下層の労働者の生活水準を下回る)を定めた

スピーナムランドは「賃金の不足分を公費で補う」仕組みです。結果として雇い主が賃金を低く抑える方向に働き、救貧税の負担が膨らんだと批判されました。

選択肢1

✕ 適切ではありません

これは1662年の定住法(居住地法)の説明です。

選択肢2

✕ 適切ではありません

これは1722年の労役場テスト法の説明です。

選択肢3

✕ 適切ではありません

これは1782年のギルバート法の説明で、院外救済を認めた点に特徴があります。

選択肢4(正答)

○ 適切です

パンの価格と家族の人数から生活の基準を定め、賃金がそれに満たない分を補う仕組みでした。賃金の引き下げを招き、救貧税の増大につながったと批判されました。

選択肢5

✕ 適切ではありません

これは1834年の新救貧法が定めた劣等処遇の原則の説明です。

↑ 目次へ戻る

問題 20

内閣府「令和7年版 男女共同参画白書」における女性の就業に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 12024年(令和6年)時点で、20歳代後半から30歳代前半の女性の就業率は約50%である。
  2. 22024年(令和6年)時点で、妻が64歳以下の世帯では、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」と「雇用者の共働き世帯」の数はほぼ等しい。
  3. 3妻が64歳以下の雇用者の共働き世帯では、1985年(昭和60年)から2024年(令和6年)の間に、妻が週35時間以上就業する世帯の数が約2倍に増加している。
  4. 42023年(令和5年)時点の「男女間賃金格差」の国際比較をみると、日本と韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均値と比べて男女間の賃金格差が大きい。
  5. 52024年(令和6年)時点で、女性の年齢階級別正規雇用比率をグラフに示すと、30歳代前半でピークを迎えた後は低下を続けている。

(注) 「男女間賃金格差」とは、フルタイム労働者について男性賃金の中央値を100とした場合の女性賃金の中央値の水準を割合表示した数値のことである。

正答・解説を見る

正答4

※ 法改正等による補足

この過去問の正誤は、問題文が指定する令和7年版男女共同参画白書の統計・図表に基づいて判断します。最新動向を学ぶ場合は新しい資料も参照できますが、過去問の指定年度の数値を最新版へ置き換えません。図番号や集計対象も年度ごとに確認します。

内閣府「令和7年版 男女共同参画白書」から、女性の就業の動向を問う問題です。

白書の図でいうと、次の4枚が下敷きになっています。
・2-1図(就業率)…2024年(令和6年)の就業率は、15〜64歳の女性74.1%、25〜44歳の女性81.9%、15〜64歳の男性84.5%。20歳代後半から30歳代前半も8割台です
・特-Ⅱ図(妻の就業時間別の共働き等世帯数)…2024年(令和6年)は、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」398万世帯に対し、共働き世帯は妻がパートタイム694万+妻がフルタイム527万=約1,221万世帯。およそ3倍の開きがあります。増えたのは主に「妻がパートタイム」の世帯で、1985年(昭和60年)の228万世帯から2024年(令和6年)の694万世帯へ。「妻がフルタイム」は400〜500万世帯で長く横ばいでした
・2-2図(年齢階級別の正規雇用比率)…25〜29歳の60.3%をピークに、その後は下がり続けます。これがL字カーブです
・2-3図(男女間賃金格差の国際比較)…男性フルタイム労働者の賃金の中央値を100としたときの女性の中央値は、OECD諸国の平均88.7に対し、日本78.0、韓国70.7です

注意したいのは、この問題の(注)にあるとおり、男女間賃金格差の数値は「男性を100としたときの女性の水準」だという点です。数値が小さいほど格差が大きいことになります。

ひとことでまとめると、「M字カーブ(労働力率)」「L字カーブ(正規雇用比率)」「共働き世帯の中身」の3点セットが問われています。1985年からの共働き世帯の増加の中心は、妻がパートタイムの世帯です。一方、妻がフルタイムの世帯も近年は増加傾向にあることを、白書は示しています。

選択肢1

✕ 適切ではありません

2024年(令和6年)の女性の就業率は、15〜64歳で74.1%、25〜44歳で81.9%であり、20歳代後半から30歳代前半も8割台です。なお「約50%」という数値は、1981年(昭和56年)の25〜29歳(50.0%)、つまりM字カーブがいちばん深くくぼんでいた頃の数値です。年代を取り違えさせる選択肢です。

選択肢2

✕ 適切ではありません

ほぼ等しいどころか、約3倍の開きがあります。2024年(令和6年)は、「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」が398万世帯なのに対し、共働き世帯は妻がパートタイム694万+妻がフルタイム527万=約1,221万世帯です。妻が64歳以下の世帯に限ったこの集計では、1991年に共働き世帯が初めて上回り、1995年に一度逆転した後、1996年以降は共働き世帯が上回っています。

選択肢3

✕ 適切ではありません

妻が週35時間未満(パートタイム)就業する共働き世帯は、1985年(昭和60年)の228万世帯から2024年(令和6年)の694万世帯へ約3倍に増加しています。一方、妻が週35時間以上(フルタイム)就業する世帯は461万世帯から527万世帯で、約1.1倍にとどまります。「共働きが増えた=フルタイムの共働きが増えた」ではない、という白書の指摘そのものが問われています。

選択肢4(正答)

○ 適切です

男性フルタイム労働者の賃金の中央値を100としたときの女性の中央値は、OECD諸国の平均が88.7であるのに対し、日本は78.0、韓国は70.7です。数値が小さいほど格差が大きいので、日本と韓国はともにOECD平均を大きく下回り、国際的にみて男女間の賃金格差が大きいことになります。

選択肢5

✕ 適切ではありません

女性の年齢階級別の正規雇用比率は、25〜29歳の60.3%がピークで、その後は下がり続けます(L字カーブ)。ピークは30歳代前半ではなく20歳代後半です。出産・育児期にいったん下がってまた上がるM字カーブは「労働力率」の形であり、正規雇用比率のL字カーブとは別のものです。この2つの区別が論点です。

↑ 目次へ戻る

問題 21

孤独・孤立対策推進法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 1孤独・孤立の状態が、青年期と高齢期に生じやすく、その状況も深刻であることに鑑み、若者と高齢者の孤独・孤立対策を重点的に講じる。
  2. 2自ら望んで孤独・孤立の状態にある者とそうでない者とを区別し、前者については孤独・孤立対策の対象とはしない。
  3. 3孤独・孤立の状態やその要因が多様であることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者や、その家族等にも状況に応じた支援を行う。
  4. 4本法の基本理念の実現に向けて、「当事者等への支援を行う者」と「地域住民」の両者が相互に連携を図りながら協力するよう努めるものと規定されている。
  5. 5孤独・孤立対策に関する施策に関し、国と地方公共団体との調整を目的として、孤独・孤立対策地域協議会を設置する。
正答・解説を見る

正答3

孤独・孤立対策推進法(2023年(令和5年)成立、2024年(令和6年)施行)の内容を問う問題です。

この法律の考え方の要点は次のとおりです。
・孤独・孤立は、人生のどの段階でも、誰にでも起こりうるものとして捉える。特定の年代に限定していない
・当事者本人だけでなく、その家族等も支援の対象とする
・国、、当事者等への支援を行う者、地域住民など、幅広い関係者が連携・協力する
・地方公共団体は、関係機関等による孤独・孤立対策地域協議会を置くよう努める

「特定の年代に絞る」「本人に限る」「支援を望まない人を外す」といった、対象を狭める方向の記述は誤りになりやすい点です。

選択肢1

✕ 適切ではありません

この法律は、孤独・孤立が人生のどの段階でも誰にでも生じうるものとして幅広く捉えており、若者と高齢者に重点を置くという定め方はしていません。

選択肢2

✕ 適切ではありません

自ら望んでいるかどうかで対象を区別する定めはありません。

選択肢3(正答)

○ 適切です

孤独・孤立の状態やその要因が多様であることを踏まえ、本人だけでなく家族等も含めて、状況に応じた支援を行うこととされています。

選択肢4

✕ 適切ではありません

連携・協力の対象は当事者等への支援を行う者と地域住民の2者に限られず、国、地方公共団体、民間団体などを含む幅広い関係者です。

選択肢5

✕ 適切ではありません

孤独・孤立対策地域協議会は、地方公共団体が地域の関係機関等による連携の場として置くよう努めるものです。国と地方公共団体との調整を目的とするものではありません。

↑ 目次へ戻る

問題 22

日本における自助・共助・公助等に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 1新経済社会7ヵ年計画(1979年(昭和54年))は、自助努力や家庭及び社会の連帯の限界を踏まえ、公的福祉を最大限に拡充するとした。
  2. 221世紀福祉ビジョン(1994年(平成6年))は、地域社会を中心とする自助、社会保障による共助、企業による商助とが適切に組み合わされた重層的な福祉構造を実現するとした。
  3. 3社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書(2006年(平成18年))は、自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとした。
  4. 4「地域包括ケア研究会報告書」(2009年(平成21年))は、介護保険制度を含む社会保険と社会福祉の2分野を公助の仕組みに位置づけた。
  5. 5社会保障制度改革推進法(2012年(平成24年))は、自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくとした。

(注) 「地域包括ケア研究会報告書」とは、平成20年度老人保健健康増進等事業「地域包括ケア研究会報告書~今後の検討のための論点整理~」(2009年(平成21年)5月22日)のことである。

正答・解説を見る

正答3・5

日本のをめぐる「自助・共助・公助」の考え方が、どの文書でどう述べられてきたかを問う問題です。

年代を追うと次のようになります。
・1979年(昭和54年) 新経済社会7ヵ年計画…個人の自助努力と家庭・社会の連帯を基礎とする「日本型福祉社会」を掲げた
・1994年(平成6年) 21世紀福祉ビジョン…公私の適切な組み合わせによる重層的な福祉構造を提唱した
・2006年(平成18年) 社会保障の在り方に関する懇談会 最終報告書…自助を基本とし、共助が補完し、それでも対応できない場合に公助が対応するとした
・2009年(平成21年) 地域包括ケア研究会報告書…自助・互助・共助・公助の4つに分け、を共助、税による福祉を公助と位置づけた
・2012年(平成24年) 改革推進法…自助・共助・公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、家族相互・国民相互の助け合いの仕組みを通じて自立した生活を支援するとした

「自助を基本に置く」流れが1990年代以降に強まっていったことを押さえます。

選択肢1

✕ 適切ではありません

新経済社会7ヵ年計画は、個人の自助努力と家庭・社会の連帯を基礎に据えた日本型福祉社会を掲げたもので、公的福祉を最大限に拡充するとしたものではありません。

選択肢2

✕ 適切ではありません

21世紀福祉ビジョンは公私の適切な組み合わせによる重層的な福祉構造を提唱しましたが、「企業による商助」という区分を柱としたものではありません。

選択肢3(正答)

○ 適切です

2006年(平成18年)の社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書は、自助を基本とし、共助が補完し、それでも対応できない状況に公助で対応するという考え方を示しました。

選択肢4

✕ 適切ではありません

地域包括ケア研究会報告書は、社会保険を共助、税を財源とする福祉を公助と位置づけました。社会保険と社会福祉の両方を公助としたのではありません。

選択肢5(正答)

○ 適切です

社会保障制度改革推進法は、自助・共助・公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じて自立した生活の実現を支援するとしています。

↑ 目次へ戻る

問題 23

「ロッシ(Rossi, P.H.)ら」による福祉サービスのプログラム評価における「成果」(アウトカム)の例として、次のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 1サービスの利用者数
  2. 2サービスの費用対効果
  3. 3サービスの実施計画と実施された内容との適合性
  4. 4サービスを受けた人々の生活の質(QOL)の向上
  5. 5サービスの予算額

(注) 「ロッシ(Rossi, P.H.)ら」とは、ロッシ(Rossi, P.H.)、フリーマン(Freeman, H.E.)、リプセィ(Lipsey, M.W.)のことである。

正答・解説を見る

正答4

プログラム評価の考え方を問う問題です。ロッシらは、のプログラムを評価する視点を段階的に整理しました。

・ニーズ評価…そもそもどんな needs があるか
…プログラムの設計や理屈が妥当か
…計画どおりに実施されているか
・アウトカム(成果)評価…対象者にどんな変化が生じたか
・効率性(費用対効果)評価…かけた費用に見合う成果が出ているか

ここで問われている「成果(アウトカム)」は、サービスを受けた人にどんな変化が起きたかを指します。利用者数などの実施量はアウトプット、予算額などの投入資源はインプットです。生活の質の変化というアウトカムと、三つを分けて考えます。

選択肢1

✕ 適切ではありません

サービスの利用者数は、どれだけ実施したかを示す指標(アウトプット)です。

選択肢2

✕ 適切ではありません

費用対効果は効率性の評価に当たります。

選択肢3

✕ 適切ではありません

実施計画と実際の内容との適合性は、プロセス評価に当たります。

選択肢4(正答)

○ 適切です

サービスを受けた人々の生活の質(QOL)の向上は、対象者に生じた変化を表すもので、成果(アウトカム)に当たります。

選択肢5

✕ 適切ではありません

予算額は投入した資源(インプット)であり、成果ではありません。

↑ 目次へ戻る

問題 24

1990年(平成2年)の「福祉関係八法改正」に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 1地域において必要な福祉サービスを総合的に提供されるように、社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施に努めなければならないとされた。
  2. 2地域福祉の推進に努める観点から、市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉支援計画を策定することとされた。
  3. 3市町村は、老人保健福祉計画、障害者計画、地方版エンゼルプラン(児童育成計画)をそれぞれ策定することとされた。
  4. 4国、地方公共団体、社会福祉事業を経営する者は、社会福祉を目的とする事業の実施にあたり、地域に即した創意と工夫を行うこととされた。
  5. 5社会福祉を目的とする事業を経営する者は、福祉サービスの利用者の意向を十分に尊重することとされた。

(注) 「福祉関係八法改正」とは、「老人福祉法等の一部を改正する法律」のことである。

正答・解説を見る

正答1・4

1990年(平成2年)のの内容を問う問題です。似た内容の改正が並ぶため、年代の区別が要点になります。

福祉関係八法改正(1990年)で行われたおもなことは次のとおりです。
・在宅を法律上に位置づけた
などへの入所措置権を、都道府県から町村を含む市町村へ移した
・市町村と都道府県にの策定を義務づけた
・福祉サービスを総合的に提供できるよう、事業の広範かつ計画的な実施に努めることとした

一方、は2000年(平成12年)のによるものです。「利用者の意向を十分に尊重する」という規定も同じく2000年の社会福祉法によるもので、八法改正の内容ではありません。計画やエンゼルプランも別の年代の話です。

選択肢1(正答)

○ 適切です

地域において必要な福祉サービスが総合的に提供されるよう、社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施に努めることとされました。

選択肢2

✕ 適切ではありません

市町村と都道府県は、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正で定められたものです。

選択肢3

✕ 適切ではありません

福祉関係八法改正で市町村に策定が義務づけられたのは老人保健福祉計画です。障害者計画や地方版エンゼルプランは別の年代のものです。

選択肢4(正答)

○ 適切です

国、を経営する者が、事業の実施にあたって地域に即した創意と工夫を行うこととされました。

選択肢5

✕ 適切ではありません

福祉サービスの利用者の意向の尊重が明確に位置づけられたのは、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正です。

↑ 目次へ戻る

問題 25

社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 11999年(平成11年)の国際労働機関(ILO)総会において、「社会的包摂」の実現がILOの活動の主要な目標として位置づけられた。
  2. 2「1995年(平成7年)の社会保障制度審議会勧告」において、社会保障推進の原則の一つとして「包摂性」という概念が用いられた。
  3. 3日本政府が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」の主要原則の一つに、「包摂性」がある。
  4. 4セン(Sen, A.)が行った、与えられた財を活用する能力に注目する福祉の測定方法は「社会的包摂アプローチ」と呼ばれる。
  5. 5欧州連合(EU)の「リスボン条約(2007)」を基盤とした「統合版(2008)」では、社会政策の章において、社会的排除との闘いを掲げている。

(注)

  1. 1「1995年(平成7年)の社会保障制度審議会勧告」とは、総理府社会保障制度審議会「社会保障体制の再構築(勧告)~安心して暮らせる21世紀の社会をめざして~」(1995年(平成7年)7月4日)のことである。
  2. 2「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」とは、内閣の持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が2016年(平成28年)12月22日に決定した同名の文書のことである。
  3. 3「リスボン条約(2007)」とは、2007年の「欧州連合条約及び欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約」のことである。
  4. 4「統合版(2008)」とは、2008年の「欧州連合条約と欧州連合の機能に関する条約の統合版」のことである。
正答・解説を見る

正答3・5

社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)をめぐる国内外の動きを問う問題です。

押さえておきたい点は次のとおりです。
・ILOは1999年(平成11年)の総会でディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を主要目標に掲げた
・日本で「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書(2000年(平成12年))が、社会的包摂を掲げたことがよく知られている
・持続可能な開発目標(SDGs)実施指針は「誰一人取り残さない」を基本に据え、主要原則の一つに包摂性を挙げている
・センが示したのは潜在能力(ケイパビリティ)アプローチで、社会的包摂アプローチという名称ではない
・EUは条約の社会政策の章で、社会的排除との闘いを掲げている

人名と概念の結びつき(セン=潜在能力)は頻出です。

選択肢1

✕ 適切ではありません

1999年(平成11年)のILO総会で主要目標として掲げられたのは、ディーセント・ワークの実現です。

選択肢2

✕ 適切ではありません

1995年(平成7年)の審議会勧告は、普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性を原則として示しました。包摂性はここには含まれていません。

選択肢3(正答)

○ 適切です

持続可能な開発目標(SDGs)実施指針は、「誰一人取り残さない」という理念のもと、主要原則の一つに包摂性を挙げています。

選択肢4

✕ 適切ではありません

センが示したのは潜在能力(ケイパビリティ)アプローチです。財そのものではなく、財を活用して何ができるかに注目する考え方です。

選択肢5(正答)

○ 適切です

EUの条約の社会政策の章では、社会的排除との闘いが目標の一つとして掲げられています。

↑ 目次へ戻る

問題 26

労働者協同組合法による組合に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 1地域における多様な労働需要に応じるための労働者派遣事業が実施できる。
  2. 2議決権は出資額に応じて付与される。
  3. 3総組合員の5分の4以上の数の組合員は、組合の行う事業に従事しなければならない。
  4. 4設立には主たる所在地の都道府県による許認可が必要である。
  5. 5組合と組合員との間の労働契約の締結は免除される。
正答・解説を見る

正答3

法(2020年(令和2年)成立、2022年(令和4年)施行)による労働者協同組合の仕組みを問う問題です。

この組合の特徴は次の3つです。
・出資…組合員が出資する
・意見反映…組合員の意見が事業に反映される
・従事…組合員自らが事業に従事する

そのうえで、制度の要点は次のとおりです。
・議決権と選挙権は出資額にかかわらず1人1票
・設立は届出制ではなく準則主義(登記により成立)で、都道府県の許認可は不要
・組合は事業に従事する組合員と労働契約を結ぶ。ただし業務を執行する組合員等には法定の除外がある
・労働者派遣事業は行えない
・総組合員の5分の4以上が事業に従事しなければならない

「働く人が自ら出資し、経営に関わり、働く」という性格を押さえておくと判断しやすくなります。

選択肢1

✕ 適切ではありません

労働者協同組合は、労働者派遣事業を行うことができません。

選択肢2

✕ 適切ではありません

議決権は出資額にかかわらず1人1票です。

選択肢3(正答)

○ 適切です

総組合員の5分の4以上の組合員が、組合の行う事業に従事しなければならないとされています。

選択肢4

✕ 適切ではありません

設立に都道府県の許認可は不要で、要件を満たして登記することで成立します。

選択肢5

✕ 適切ではありません

組合は、事業に従事する組合員と労働契約を結ぶことが基本となる。ただし、組合の業務を執行する組合員や監事などの法定の除外がある。

↑ 目次へ戻る

問題 27

国際人権規約に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 1国際人権規約は、その前文で「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」であると位置づけている。
  2. 2日本は、「自由権規約」への違反に関し、個人や集団が自由権規約人権委員会に通報できることを規定した「選択議定書」を批准している。
  3. 3日本は、「社会権規約」のうち、公務員のストライキ権等の一部の規定については、これに拘束されない権利を留保している。
  4. 4日本は、「社会権規約」のうち、中等教育及び高等教育における無償教育の漸進的な導入に関する規定に拘束されている。
  5. 5「社会権規約」は、障害者に合理的配慮が提供されることを確保されるための適切な措置をとることを締約国に求めている。

(注)

  1. 1「自由権規約」とは、国際人権規約の「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(いわゆる「B規約」)のことである。
  2. 2「社会権規約」とは、国際人権規約の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(いわゆる「A規約」)のことである。
  3. 3「選択議定書」とは、国際人権規約の「市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書」(第一選択議定書)のことである。
正答・解説を見る

正答3・4

国際人権規約に対する日本の対応を問う問題です。

国際人権規約は1966年(昭和41年)に採択され、日本は1979年(昭和54年)に批准しました。構成は次のとおりです。
・A規約(社会権規約)…経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約
・B規約(自由権規約)…市民的及び政治的権利に関する国際規約
・選択議定書…個人が委員会に通報できる仕組みを定めたもの

日本の対応で押さえておきたい点は次のとおりです。
・個人通報制度を定めた選択議定書は批准していない
・社会権規約のうち、公務員のストライキ権等に関する規定は留保している
・中等教育・高等教育の無償教育の漸進的導入に関する規定は、長く留保していたが2012年(平成24年)に撤回した
の提供を確保する措置を明文で定めるのは権利条約。社会権規約の平等・差別禁止の解釈とは区別して確認する

「批准していない」「留保している」「留保を撤回した」の3つの区別が問われます。

選択肢1

✕ 適切ではありません

「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」と前文で位置づけているのは、世界人権宣言です。

選択肢2

✕ 適切ではありません

日本は、個人通報制度を定めた選択議定書を批准していません。

選択肢3(正答)

○ 適切です

日本は、社会権規約のうち公務員のストライキ権等に関する一部の規定について留保しています。

選択肢4(正答)

○ 適切です

中等教育及び高等教育の無償教育の漸進的な導入に関する規定について、日本は長く留保していましたが、2012年(平成24年)に留保を撤回しました。そのため現在は拘束されています。

選択肢5

✕ 適切ではありません

合理的配慮の提供を確保するための措置を明文で定めているのは障害者権利条約である。社会権規約に同じ条文があるわけではないが、同規約の平等・差別禁止の解釈と合理的配慮が無関係という意味ではない。

↑ 目次へ戻る

出典

用語の説明

社会福祉法しゃかいふくしほう

福祉サービス全体に共通する土台を定めた法律。社会福祉事業の範囲、社会福祉法人、社会福祉協議会、福祉事務所、地域福祉計画などを置いています。生活保護法や児童福祉法のような個別の法律が乗る、いちばん下の台と考えると位置づけがつかめます。

用語の説明

社会保険しゃかいほけん

病気・けが・老齢・失業・介護・労働災害などに備え、法律に基づく加入と保険料の負担を基本として給付する公的な仕組みです。医療、年金、介護、雇用、労災の各保険があります。公費も財源に含まれ、労災の事業主負担や年金の第3号被保険者など、本人が個別に保険料を納めない場合もあります。

用語の説明

住居確保給付金じゅうきょかくほきゅうふきん

生活困窮者自立支援法に基づく住まいの支援です。離職・収入減少等により住居を失った、または失うおそれがある人への家賃補助に加え、2025年4月から、収入が著しく減少し家計改善のため転居が必要な人への転居費用補助があります。所得・資産等の要件を確認し、求職活動要件は給付の種類によって異なります。

用語の説明

社会保障制度しゃかいほしょうせいど

病気・老い・失業・貧困などに社会全体で備える仕組みの総称。社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生の4つの柱で説明されるのが一般的です。

用語の説明

社会福祉事業しゃかいふくしじぎょう

社会福祉法が定める福祉サービスの事業。利用者への影響が大きく規制の強い第一種社会福祉事業(入所施設が中心)と、比較的規制のゆるやかな第二種社会福祉事業に分かれます。

用語の説明

地方公共団体ちほうこうきょうだんたい

都道府県や市町村などの地方の行政組織のこと。法律の条文では「国及び地方公共団体」という形で、責務の主体として書かれることが多い言葉です。

用語の説明

合理的配慮ごうりてきはいりょ

障害のある人から社会的障壁を取り除いてほしいと申し出があったとき、負担が重すぎない範囲で行う個別の調整のこと。筆談や座席の工夫など、その人の状況に応じて内容が変わります。

用語の説明

市町村地域福祉計画しちょうそんちいきふくしけいかく

社会福祉法に基づき市町村が定める、地域福祉の推進についての計画。住民の意見を反映させることが求められ、策定は努力義務とされています。

用語の説明

都道府県地域福祉支援計画とどうふけんちいきふくししえんけいかく

市町村の地域福祉計画づくりや実施を後押しするために、都道府県が定める計画。人材の育成や広域的な調整などを盛り込みます。

用語の説明

福祉サービスふくしサービス

生活を支えるために提供される公的・民間のサービスの総称。措置から契約へと利用の仕組みが変わったことで、利用者の選択と、その選択を支える権利擁護の仕組みが重要になりました。

用語の説明

地域福祉計画ちいきふくしけいかく

社会福祉法に基づく、地域福祉の推進についての計画。市町村が定めるものと、それを支える都道府県のものがあり、住民の意見を反映させることが求められます。

用語の説明

地域福祉支援計画ちいきふくししえんけいかく

都道府県が策定する、市町村の地域福祉の推進を広域的に支援するための計画のこと。社会福祉法に基づくもので、市町村が定める地域福祉計画を後押しする内容を盛り込みます。市町村がつくるのが地域福祉計画、都道府県がつくるのが地域福祉支援計画であり、社会福祉協議会がつくる地域福祉活動計画とも区別して覚えます。

用語の説明

労働者協同組合ろうどうしゃきょうどうくみあい

働く人自身が出資し、その意見を反映しながら、自ら事業に従事する組織のこと。労働者協同組合法に基づく法人で、介護、子育て支援、配食、清掃など地域の困りごとに応じた仕事を住民自身がつくる担い手として期待されています。出資、意見の反映、事業への従事という三つがそろう点が、他の法人との違いです。

用語の説明

プロセス評価プロセスひょうか

事業が計画どおりの手順や体制で実施されたかを確かめる評価のこと。実施回数や参加人数、運営の進め方など、成果そのものではなく実施の過程に目を向けます。生じた変化を見るアウトカム評価や、投入した資金や人員に見合う成果だったかを見る効率性評価と取り違えないようにします。

用語の説明

セオリー評価セオリーひょうか

事業が目的の達成につながる道筋や前提が妥当かどうかを検討する評価のこと。この方法で本当にねらった成果に結び付くのかという筋道や設計の考え方を確かめます。実施の過程を見るプロセス評価や、実施後に生じた変化を見るアウトカム評価とは、見ている対象が異なります。

用語の説明

特別養護老人ホームとくべつようごろうじんほーむ

老人福祉法に基づく施設で、常に介護が必要で自宅での生活が難しい高齢者が入所して生活する場のこと。介護保険法では介護老人福祉施設と呼ばれ、原則として要介護3以上の人が対象です。在宅復帰に向けたリハビリテーションを役割とする介護老人保健施設とは目的が異なる点を押さえましょう。

用語の説明

福祉関係八法改正ふくしかんけいはっぽうかいせい

1990年に老人福祉法・身体障害者福祉法・老人保健法など8つの法律を改正したものです。在宅福祉サービスの推進、施設入所等に関する権限の町村への移譲、都道府県・市町村の老人保健福祉計画の策定義務化などが柱です。デイサービス・ショートステイの法定化そのものは1986年の老人福祉法改正であり、1990年の改正と区別します。

用語の説明

老人保健福祉計画ろうじんほけんふくしけいかく

市町村と都道府県が、高齢者の福祉サービスと保健事業の目標や見込み量を定める計画のこと。福祉関係八法改正によって策定が義務づけられました。現在は、老人福祉法に基づく老人福祉計画が介護保険事業計画と一体のものとして作られており、計画の名前と根拠法の組み合わせを入れ替える出題に注意が必要です。

用語の説明

社会保障しゃかいほしょう

病気、老齢、失業、貧困などで生活が不安定になったときに、国や社会が給付やサービスで暮らしを支える仕組みの総称。試験では、生活安定・向上機能、所得再分配機能、経済安定機能という3つの機能の区別が問われます。保険料を出し合う社会保険と、税を財源とする社会扶助に大きく分かれます。

用語の説明

障害者しょうがいしゃ

障害者基本法で、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があり、障害と社会的障壁によって日常生活または社会生活に継続的に相当な制限を受ける状態にある人のこと。障害者手帳を持っているかどうかは、この定義の要件ではありません。制限が心身の障害だけでなく社会的障壁からも生じるとする社会モデルの考え方が入っている点が問われます。