第38回(令和8年2月実施) 社会福祉調査の基礎

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問題文は「第38回社会福祉士国家試験 試験問題」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)より、出題当時の文言のまま掲載しています。正答は同センター公表の「合格基準及び正答」に基づきます。解説は管理人(ばっふぁ)が独自に作成したものです。

問題 79

高齢者の通所型サービス事業を経営するA社会福祉法人では、地域における公益的な取組の内容を検討するため、地域の高齢者に対する無記名の質問紙調査を企画し、高齢者福祉を専門とするB教授の協力を得て、調査を実施することにした。その際、調査結果は、B教授の論文執筆にも用いることで合意した。 次の記述のうち、調査実施における倫理への対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 1A社会福祉法人のサービス利用者を調査対象から除外した。
  2. 2調査結果はA社会福祉法人による地域における公益的な取組の内容検討と、B教授の論文執筆に用いることを依頼文に記載した。
  3. 3A社会福祉法人からB教授への利益供与とみなされないために、調査費用の負担をB教授に求めた。
  4. 4調査対象の設定において、B教授がこれまで実施してきた調査の回答者名簿を活用することとした。
  5. 5B教授は、調査によって得られたデータの中から、自らの仮説に適合する一部のデータを選出して論文を執筆した。
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正答2

質問紙調査を行うときの、調査倫理への対応を問う事例問題です。

調査倫理の要点は次のとおりです。
・インフォームド・コンセント…調査の目的、結果の使い道、公表の仕方を、あらかじめ依頼文などで伝える
・目的外利用の禁止…別の調査で集めた名簿や回答を、本人の同意なく他の調査に使わない
・データの改変・取捨選択の禁止…自分の仮説に都合のよいデータだけを選んで論じることは研究不正に当たる
・利用者が対象に含まれる場合は、協力しなくてもサービスに不利益が生じないことを明確に伝える

本事例では、結果をA法人の取組の検討とB教授の論文の両方に用いることが決まっています。その両方の使い道を回答者に伝えることが、最初に必要な対応です。

選択肢1

✕ 適切ではありません

調査対象は地域の高齢者であり、利用者を一律に外すと対象がかたよります。必要なのは除外ではなく、協力の有無でサービスに不利益が及ばないことを伝えることです。

選択肢2(正答)

○ 適切です

結果の使い道を二つとも依頼文に記し、了解を得たうえで回答してもらう対応です。

選択肢3

✕ 適切ではありません

費用を誰が負担するかと、調査倫理上の利益供与の問題は別のことがらです。

選択肢4

✕ 適切ではありません

別の調査で得た回答者名簿を本人の同意なく使うことは、目的外利用に当たります。

選択肢5

✕ 適切ではありません

仮説に合うデータだけを選んで論文を書くことは、研究不正に当たります。

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問題 80

調査デザインに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 1有意抽出は、標本数が限定されている場合に、標本抽出の確率を等しくする方法である。
  2. 2無作為抽出による標本調査は、標本の特性を推論することを目指す方法である。
  3. 3実験計画法は、因果関係の検証に適した方法である。
  4. 4縦断調査は、複数の母集団を対象に一時点のデータを収集する方法である。
  5. 5パイロット調査は、調査地域や実施計画、調査にかかるコスト等の適切さを確認するために、まずは小規模な標本に対して行う方法である。
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正答3・5

調査デザインの基本用語を問う問題です。

押さえておきたい区別は次のとおりです。
・無作為(ランダム)抽出…確率に基づいて標本を選ぶ方法。単純無作為抽出では各要素の抽出確率が等しい。適切な設計と推定方法で母集団の特性を推測する
・有意抽出…調査者の判断で選ぶ非確率抽出。母集団への推測には向かない
・横断調査…一時点でデータを集める/縦断調査…複数時点の変化を調べる。同一対象を追跡するパネル調査などがある
・実験計画法…対象を無作為に分け、条件をそろえて比べることで、原因と結果の関係を確かめる
・パイロット調査(予備調査)…本番の前に小規模に試し、質問の分かりやすさや手順・費用を確かめる

選択肢1

✕ 適切ではありません

調査者の判断で選ぶ有意抽出と、確率に基づいて選ぶ無作為抽出を区別する。各要素を等しい確率で選ぶのは単純無作為抽出の特徴であり、確率抽出全体には抽出確率が異なる設計もある。

選択肢2

✕ 適切ではありません

標本調査で推論しようとするのは、標本ではなく母集団の特性です。

選択肢3(正答)

○ 適切です

実験計画法は、条件を統制して比べることで因果関係を確かめるのに適した方法です。

選択肢4

✕ 適切ではありません

一時点のデータを集めるのは横断調査である。縦断調査は複数時点で変化を捉える調査で、同じ対象を追跡するパネル調査などが含まれる。縦断調査全体を同一個人の追跡だけに限定しない。

選択肢5(正答)

○ 適切です

パイロット調査は、本調査の前に小規模に行い、調査地域・実施計画・費用などの適切さを確かめるものです。

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問題 81

A市では、市内の小中学生を対象とする生活実態調査を行うこととなった。本調査の検討を行う委員会において、中学生になると朝食を摂らない生徒が多くなることが指摘され、調査では小学生と中学生の朝食の摂取状況の違いをクロス集計によって検証することとなった。調査票では、朝食を摂る頻度に関する質問を設け、その選択肢を「週に3回以上/週に1~2回程度/月に1~2回程度」とした。次のうち、この選択肢に当てはまるものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

  1. 1SD法
  2. 2比例尺度
  3. 3順序尺度
  4. 4複数回答法
  5. 5リッカート法
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正答3

質問紙の選択肢が、どの測定の尺度に当たるかを問う問題です。

尺度の4つの水準は次のとおりです。
・名義尺度…区別するだけで、順序に意味がない(性別、居住地など)
・順序尺度…多い少ないの順序に意味があるが、間隔は等しくない
・間隔尺度…目盛りの間隔が等しいが、0が「無い」を意味しない(気温、西暦など)
・比例尺度…間隔が等しく、0が「無い」を意味する。倍・半分といった比に意味がある(回数、年齢など)

設問の「週に3回以上/週に1〜2回程度/月に1〜2回程度」は、多い順に並んでいますが、それぞれの幅は等しくありません。したがって順序尺度です。

選択肢1

✕ 適切ではありません

SD法は、相対する形容詞の組(明るい−暗いなど)を両端に置いて、印象を段階で測る方法です。

選択肢2

✕ 適切ではありません

比例尺度なら「週に何回」と実数で尋ねる形になります。ここは幅をもたせた区分で尋ねています。

選択肢3(正答)

○ 適切です

多い少ないの順序はありますが、区分の幅が等しくないため順序尺度です。

選択肢4

✕ 適切ではありません

複数回答法は、当てはまるものをいくつでも選ぶ回答の仕方の分類です。

選択肢5

✕ 適切ではありません

リッカート法は、「そう思う」から「そう思わない」までの段階で、賛否や程度を測る方法です。

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問題 82

統計法に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 1公的統計を国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報として位置づけている。
  2. 2調査票情報の二次利用が禁じられている。
  3. 3国勢調査の報告の求めであると人を誤認させるような説明をして、個人又は団体から情報を取得した者に対しては、罰則が適用される。
  4. 4厚生労働省が実施する介護サービス施設・事業所調査は、基幹統計に含まれる。
  5. 5都道府県に統計委員会を設置する。
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正答1・3

統計法(2007年(平成19年)全部改正)の内容を問う問題です。

統計法の要点は次のとおりです。
・公的統計を「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」と位置づけている(第1条・第3条)
・基幹統計と、それ以外の一般統計調査を区別している。基幹統計には国勢統計、国民経済計算、国民生活基礎統計などがある
・調査票情報は、統計の作成や統計的研究等の法定要件の下で二次利用できる。調査票情報の提供、オーダーメード集計、匿名データの提供など、利用形態ごとに条件が異なる
・国勢調査などをかたって情報を集める行為(かたり調査)には罰則がある
・統計委員会は総務省に置かれる。都道府県に置くものではない

選択肢1(正答)

○ 適切です

統計法は、公的統計を国民の合理的な意思決定の基盤となる重要な情報と位置づけています。

選択肢2

✕ 適切ではありません

統計法は、要件を満たす場合の調査票情報の二次利用を認めています。

選択肢3(正答)

○ 適切です

国勢調査の報告の求めであると人を誤認させて情報を得る行為(かたり調査)には、罰則が定められています。

選択肢4

✕ 適切ではありません

介護サービス施設・事業所調査は一般統計調査であり、基幹統計ではありません。

選択肢5

✕ 適切ではありません

統計委員会は総務省に置かれます。

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問題 83

インタビューデータの整理と分析に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

  1. 1調査者自身の意見と合致する内容を録音データから抜き出し、逐語録を作成した。
  2. 2対象者の発言内容を、関連する専門用語に当てはめてコーディングを行った。
  3. 3カテゴリーの数が先行研究と近似するように、コードを分類した。
  4. 4分析を終えるまで、インタビューの逐語録を繰り返し参照した。
  5. 5解釈の妥当性を確認するために、分析結果を図式化した概念図を対象者に説明し、意見を求めた。
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正答4・5

インタビューで得た質的データを、どう整理し分析するかを問う問題です。

質的データの扱いの原則は次のとおりです。
・逐語録は、語られたことをそのまま書き起こす。調査者の意見に合う部分だけを抜き出さない
・コーディングではデータに即して意味を捉え、既成の枠に機械的に押し込めない。理論に基づく演繹的方法もあるが、データとの適合性を確かめる
・分析の途中で何度も元の逐語録に立ち返り、解釈がデータから離れていないかを確かめる
・メンバーチェッキング…分析結果を対象者に示して意見を求め、解釈のを確かめる

選択肢1

✕ 適切ではありません

自分の意見に合う部分だけを抜き出したものは、逐語録とはいえません。

選択肢2

✕ 適切ではありません

本問では、語りを十分に読み取らず、用意した専門用語へ機械的に当てはめる姿勢が問題である。質的分析には理論に基づく演繹的コーディングもあるが、その場合も枠組みとデータの適合性を検討し、語りを歪めないことが必要である。

選択肢3

✕ 適切ではありません

カテゴリーの数を先行研究に近づけることを目的に分類すると、データから離れた分析になってしまいます。

選択肢4(正答)

○ 適切です

分析を終えるまで逐語録に繰り返し立ち返ることは、質的分析の基本です。

選択肢5(正答)

○ 適切です

概念図を対象者に説明して意見を求めることは、メンバーチェッキングと呼ばれ、解釈の妥当性を確かめる方法です。

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問題 84

事例を読んで、次のうち、社会福祉法人A会が行った評価・分析の方法に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

社会福祉法人A会では、中期事業計画の策定に際し、法人の現状について、他の法人と比べて優れている内部の資源や能力、改善の余地がある内部の課題などの内部環境要因を洗い出し、それに影響を与える活用可能な外部環境の好条件や、成長や存続を妨げる外部リスクなどの外部環境要因も含めて、将来の方向性を整理した。

  1. 1PDCA
  2. 2SWOT分析
  3. 3バランス・スコアカードによる評価
  4. 4ロジックモデル
  5. 5トライアンギュレーション
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正答2

組織の現状を分析する手法のうち、事例に当てはまるものを問う問題です。

主な手法は次のとおりです。
・SWOT分析…内部環境を強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、外部環境を機会(Opportunities)と脅威(Threats)に整理し、今後の方向性を考える
・PDCA…計画・実行・評価・改善を繰り返して質を高める進め方
・バランス・スコアカード…財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4つの視点から業績を評価する
・ロジックモデル…資源から活動、結果、成果へと至る筋道を図にしたもの
・トライアンギュレーション…複数の方法やデータを組み合わせ、結果の確かさを高める考え方

事例は、内部の優れた点と課題、外部の好条件とリスクの4つを洗い出しています。これはSWOT分析です。

選択肢1

✕ 適切ではありません

PDCAは、計画・実行・評価・改善を回していく管理の進め方です。

選択肢2(正答)

○ 適切です

内部環境の強み・弱みと、外部環境の機会・脅威を洗い出して方向性を整理する手法です。

選択肢3

✕ 適切ではありません

バランス・スコアカードは、4つの視点から業績を測って評価する手法です。

選択肢4

✕ 適切ではありません

ロジックモデルは、資源・活動・結果・成果のつながりを図にしたものです。

選択肢5

✕ 適切ではありません

トライアンギュレーションは、複数の方法やデータを組み合わせて結果の確かさを高める、調査上の考え方です。

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出典

用語の説明

妥当性だとうせい

調査や測定で、目的とする概念を適切に捉えられているかという性質です。測定結果の一貫性や安定性を示す「信頼性」とは異なり、毎回同じ結果が出るだけで妥当性が保証されるわけではありません。