第37回(令和7年2月実施) 社会福祉調査の基礎
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問題文は「第37回社会福祉士国家試験 試験問題」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)より、出題当時の文言のまま掲載しています。正答は同センター公表の「合格基準及び正答」に基づきます。解説は管理人(ばっふぁ)が独自に作成したものです。
問題 79
ブース(Booth, C.)のロンドン調査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1ロンドン市民の人口統計の作成が目的だった。
- 2調査対象となった市民の自宅へ調査票を配布する郵送調査だった。
- 3当時のロンドン市民の一部を調査対象とする標本調査だった。
- 4貧困の主たる原因が、個人的習慣であることを明らかにした。
- 5ロンドンの街を経済階層で色分けした貧困地図を作成した。
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正答5
ブースのロンドン調査を問う問題です。社会調査の歴史で最初に押さえる調査なので、要点を4つに絞って覚えます。
・目的…ロンドンの貧困の実態を明らかにすること。「市民の4分の1が貧困」という当時の主張を、事実で確かめようとした
・方法…学務委員会の訪問員など、住民の暮らしをよく知る人からの聞き取りを積み重ねた、ロンドン全体を対象とする大規模な調査
・結果…およそ3割が以下にあり、貧困の主な原因は飲酒などの個人的習慣ではなく、低賃金や不安定な雇用にあることを明らかにした
・貧困地図…街路を経済階層ごとに色分けした地図を作り、貧困の広がりを目に見える形にした
正答は選択肢5の貧困地図です。この調査は「貧困線」の考え方でも知られ、後のラウントリーのヨーク調査に受け継がれていきます。セットで覚えてください。
管理人の視点: この調査のいちばんの意義は、「貧しいのは本人の怠けのせい」という当時の常識を、データでひっくり返したことだと思っています。生活に困っている方への「自己責任」のまなざしは、130年以上たったいまも消えていません。目の前の事例の背景にある雇用や住まいの問題を、印象ではなく事実で示す。相談員が調査を学ぶ意味は、ここにつながっています。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
目的は人口統計の作成ではなく、ロンドンの貧困の実態を明らかにすることでした。「市民の4分の1が貧困」という当時の主張を、事実で確かめようとした調査です。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
郵送調査ではありません。学務委員会の訪問員など、住民の暮らしをよく知る人からの聞き取りを積み重ねる方法がとられました。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
ロンドン全体を対象とした調査で、一部を抜き出す標本調査ではありません。無作為抽出を使う標本調査の方法が広まるのは、この調査より後のことです。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
明らかになったのは逆のことです。貧困の主な原因は飲酒などの個人的習慣ではなく、低賃金や不安定な雇用といった社会的な要因でした。
- 選択肢5(正答)
○ 適切です
ブースは、ロンドンの街路を住民の経済階層ごとに色分けした貧困地図を作成しました。貧困が個人の問題ではなく地域に広がる社会の問題であることを、誰の目にも見える形にしたものです。
問題 80
調査における倫理に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1調査者と対象者との利害関係についての検討は不要である。
- 2調査の目的や対象等に関する倫理審査は、調査終了後に行う必要がある。
- 3対象者本人について調べる場合、対象者の認知機能を考慮することは不要である。
- 4調査が対象者に及ぼす心理的な影響については、検討する必要がある。
- 5想定していた結果と異なるデータは、削除する必要がある。
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正答4
調査における倫理を問う問題です。判断の軸は「対象者を守る」と「データに誠実」の2つです。
・インフォームド・コンセント…目的や方法を説明し、自由な意思で同意を得る。断っても不利益がないことも伝える
・心身への配慮…調査が対象者に与える負担や心理的な影響を、実施する前に検討する
・利害関係の点検…調査者が支援者でもあるなど、対象者が断りにくい関係がないかを確かめる
・倫理審査…調査を始める前に受ける
・データの誠実な扱い…捏造・改ざんをしない。都合の悪いデータの削除も改ざんにあたる
正答は4です。虐待やつらい体験に触れる質問は、答えること自体が対象者を傷つけることがあります。だからこそ、心理的な影響の検討は調査を設計する段階で必ず行います。
管理人の視点: 施設で利用者アンケートを取るとき、私がいちばん気にするのは利害関係です。日々支援を受けている相手からの調査は、「悪く書いたら支援に響くのでは」と思わせてしまう力関係の上に成り立っています。だから「答えなくても、何を書いても、支援は変わりません」と口頭でも文書でも伝えます。倫理は書類をそろえるためではなく、この一言のためにあると思っています。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
調査者と対象者の間に支援する・されるといった関係があると、対象者は調査を断りにくくなります。利害関係の検討は必ず必要です。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
倫理審査は調査を始める前に受けるものです。終わってから審査しても、対象者への不利益や負担を防ぐことができません。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
認知機能への考慮は必要です。調査の目的を理解したうえで同意できるか(インフォームド・コンセント)や、質問に無理なく答えられるかに直接関わるためです。
- 選択肢4(正答)
○ 適切です
質問に答えること自体が、つらい体験を思い出させるなど対象者の心を傷つけることがあります。調査が及ぼす心理的な影響は、実施する前に必ず検討します。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
想定と違うデータを削除することは、結果をゆがめる改ざんにあたります。都合の悪いデータも含めて誠実に扱うのが調査の倫理です。
問題 81
A市こども家庭センターでは、担当圏域の地域住民を対象に、児童虐待の発生予防に向けた活動への協力意向について多肢選択法による質問紙調査を実施することにした。その際、用いる質問文として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1「あなたは、児童虐待を防止するための活動や、児童虐待があった家庭を支援するための活動に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
- 2「児童虐待を予防するためには地域で協力することが必要不可欠ですが、あなたは、地域での見守り活動に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
- 3「あなたは、ネグレクトされている児童の早期発見に向けて、地域でのアセスメント活動に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
- 4「あなたは、児童虐待の予防に向けた小学校での取組に協力したいと思いますか。あてはまるもの1つを選択してください」
- 5「あなたは、虐待を受けた児童の心理面を支える活動に、地域のニートが協力することについて、どのようにお考えですか。あてはまるもの1つを選択してください」
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正答4
質問紙の質問文の作り方(ワーディング)を問う問題です。避けるべき質問文の型を覚えておけば、消去法で確実に取れます。
・ダブルバーレル質問…1つの質問で2つのことを聞く。片方だけ協力したい人が答えられなくなる
・誘導質問…「必要不可欠ですが」のような前置きで、答えを一方へ誘う
・専門用語…「」「」は、一般の住民に正しく伝わらない
・質問の対象のずれ…回答者自身の協力意向を、他の人が協力することへの意見に置き換えない
この4つを順にあてはめると、選択肢1(ダブルバーレル)、2(誘導)、3(専門用語)、5(質問の対象のずれ)が消えます。残った4は、聞くことが1つで、前置きも専門用語もない平易な質問文です。
管理人の視点: アンケートを作る側になると、つい1つの質問にあれこれ詰め込みたくなります。私の決まりは、出来上がった質問文を声に出して読み、利用者やご家族の顔を思い浮かべて「この方がすっと答えられるか」を確かめることです。答えにくい質問は、回収率も回答の質も落とします。質問文の練り込みは、集計より前にある勝負どころです。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
「防止するための活動」と「あった家庭を支援するための活動」の2つを一度に聞くダブルバーレル質問です。片方だけ協力したい人が答えられません。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
「協力することが必要不可欠ですが」という前置きが、協力したいという答えの方へ誘導しています。誘導する前置きは付けないのが原則です。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
「ネグレクト」「アセスメント」という専門用語が使われています。一般の地域住民を対象とする調査では、誰にでも分かる言葉に言いかえる必要があります。
- 選択肢4(正答)
○ 適切です
聞いていることが1つで、誘導する前置きも専門用語もありません。地域住民が迷わず答えられる、適切な質問文です。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
調査の目的は回答者自身の協力意向を把握することなのに、この質問は他の人が協力することへの意見を尋ねている。質問の対象がずれている点が主な問題である。対象集団を表す語も、定義や受け止め方を確かめて用いる。
問題 82
事例を読んで、A市地域包括支援センターが実施する調査票の配布・回収の方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
A市地域包括支援センターでは、担当圏域における要支援状態の高齢者50名を対象に、高齢者が感じている困りごとの把握を目的とした標本調査を実施することとした。センター長からの「ご家族の困りごとではなく、高齢者ご自身が感じている困りごとの把握が目的である点に注意すること」という指示を踏まえて、調査票の配布・回収方法を検討することとなった。
- 1郵送調査
- 2留置調査
- 3個別面接調査
- 4集合調査
- 5インターネット調査
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正答3
調査票の配布・回収方法の使い分けを問う事例問題です。
まず、方法は「誰が記入するか」で2つに分かれます。
・自記式…対象者が自分で記入する。郵送調査、留置調査、集合調査、インターネット調査
・他記式…調査員が尋ねて記入する。個別面接調査、電話調査
郵送・留置・一般的なインターネット調査では、本人以外による回答を見分けにくいことが課題です。ただし、本人確認を行う集合調査などもあり、自記式なら常に確認できないわけではありません。
この事例で答えを決める一文は、センター長の「ご家族の困りごとではなく、高齢者ご自身が感じている困りごとの把握が目的である」という指示です。郵送や留置では、家族が代わりに記入しても分かりません。調査員が本人と向き合って尋ねる個別面接調査なら、本人の回答であることを確かめられ、読み書きが難しい方でも答えられます。対象が50名という規模であることも、面接で回れる根拠になります。
管理人の視点: 高齢者本人への調査やで、家族が先に答えてしまう場面は現場で本当によくあります。そして家族の見立てと本人の思いは、しばしば食い違います。家族は「転倒が心配」、本人は「話し相手がいないのがさみしい」。誰の声を聞きたいのかを先に決めて、それに合う方法を選ぶ。この順番は、日々の相談援助と同じです。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
郵送調査は自記式で、誰が記入したかを確かめられません。家族が代わりに書けば、家族の見た困りごとが混ざってしまいます。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
留置調査は調査票を預けて後日回収する自記式の方法です。郵送と同じく、本人以外が記入しても分かりません。
- 選択肢3(正答)
○ 適切です
個別面接調査は、調査員が対象者本人と向き合って尋ねる他記式の方法です。高齢者本人の回答であることを確かめられ、事例の目的に合っています。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
集合調査は対象者に一か所へ集まってもらい、その場で記入してもらう方法です。状態の高齢者を集めること自体が難しく、周りの目があると本音も話しにくくなります。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
インターネット調査も自記式で、本人が回答したかを確かめられません。要支援状態の高齢者には操作の負担も大きい方法です。
問題 83
A介護老人福祉施設では、夜間の睡眠時間を十分に確保できていない利用者Bさんへの対応が課題となっていた。検討の結果、日中の水分摂取量が要因のひとつとして取り上げられ、1か月間データを取って調べることとなった。 Bさんの日中の水分摂取量(ml)と夜間の睡眠時間(分)の関係を見るときに用いる方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1t検定
- 2カイ2乗検定
- 3散布図
- 4箱ひげ図
- 5度数分布表
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正答3
日中の水分摂取量と夜間の睡眠時間は、どちらも量的変数です。各日の二つの値を横軸と縦軸にとって点で示す散布図により、関係の方向や強さ、外れ値を確認できます。正答は選択肢3です。
t検定は平均値に関する検定、カイ2乗検定はカテゴリ別の度数などを用いる検定です。箱ひげ図は量的変数の分布や群間の比較、度数分布表は区分ごとの件数の整理に使います。道具にできることを一律に狭く決めず、本問の「二つの量的変数の関係をまず目で見る」という目的に合わせて選びます。
散布図で関連が見えても、それだけで水分摂取量が睡眠時間を変化させたという因果関係が証明されるわけではありません。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
t検定は平均値の差などを検討する方法で、独立2群、対応のある2群、1標本などの使い方がある。本問の二つの量的変数の関係を図で把握する目的には散布図が適している。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
カイ2乗検定には、カテゴリ間の独立性や度数分布の適合度を検討する使い方がある。水分摂取量と睡眠時間という二つの量的変数の関係をそのまま図示する方法ではない。
- 選択肢3(正答)
○ 適切です
散布図は、2つの量的な変数を横軸と縦軸にとり、データを点で打って関係を見る図です。水分摂取量と睡眠時間の関係を見るこの場面にぴったり合います。
- 選択肢4
✕ 適切ではありません
箱ひげ図は量的変数の分布を中央値や四分位数等で示し、群別に並べて比較することもできる。ただし、二つの量的変数の値の組をそのまま図示する本問の目的には散布図が適している。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
度数分布表は、1つの変数について、区分ごとに何件あるかをまとめた表です。これも変数1つの分布を見る道具で、2つの変数の関係は分かりません。
問題 84
面接調査において調査者が行ったことに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1構造化面接において、調査の質問項目に設定していない内容についても自由に回答するよう対象者に求めた。
- 2半構造化面接において、インタビューガイドに設定した質問の順番に従って回答するよう対象者に求めた。
- 3非構造化面接において、調査開始前に対象者がテーマを設定するよう依頼した。
- 4フォーカスグループインタビューにおいて、司会者として最初に基本的なルールを説明した。
- 5面接後の逐語録作成において、録音データを聞き取れない部分は会話の流れから想像して記述した。
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正答4
質的調査で使う面接法の使い分けを問う問題です。面接は、質問をどこまで決めておくかで3つに分かれます。
・構造化面接…質問の内容も順番も決めておき、そのとおりに尋ねる。対象者どうしの比較がしやすい
・半構造化面接…おおまかなインタビューガイドは用意するが、話の流れに合わせて順番や掘り下げを柔軟に変える
・非構造化面接…テーマは調査者が持ったうえで、対象者に自由に語ってもらう
これに、複数の対象者で行うフォーカスグループインタビューが加わります。司会者(モデレーター)が進行し、参加者どうしのやり取りから意見や本音を引き出す方法です。最初に「人の発言を否定しない」「ここで聞いた話を外で話さない」といった基本ルールを説明するのは、安心して話せる場を作るための司会者の大事な仕事です。だから選択肢4が正答です。
選択肢1〜3はそれぞれの面接法の特徴と逆のことをしており、5の「聞き取れない部分を想像で書く」はデータの捏造にあたります。
管理人の視点: 最初のルール説明は、形だけのあいさつではありません。家族会でも実習の反省会でも、冒頭に「どの意見も否定しない」「ここでの話は持ち出さない」と一言置くだけで、出てくる話の深さが変わります。安心して話せる場は自然にはできず、進行役が作るものです。調査に限らず、カンファレンスの進行にもそのまま効く技術です。
- 選択肢1
✕ 適切ではありません
構造化面接は、あらかじめ決めた質問項目を決めた順番で尋ねる方法です。項目にない内容を自由に答えてもらうのは、この方法の趣旨に反します。
- 選択肢2
✕ 適切ではありません
半構造化面接の持ち味は、インタビューガイドを用意しつつ、話の流れに合わせて順番や掘り下げを柔軟に変えられることです。順番どおりの回答を求めては、その持ち味が失われます。
- 選択肢3
✕ 適切ではありません
非構造化面接でも、テーマ(何について聞くか)は調査の目的に沿って調査者が設定します。対象者に自由に語ってもらうことと、テーマを対象者に決めてもらうことは別です。
- 選択肢4(正答)
○ 適切です
フォーカスグループインタビューでは、司会者(モデレーター)が最初に、人の発言を否定しない、聞いた話を外で話さないといった基本ルールを説明します。参加者が安心して話すために必要な進行です。
- 選択肢5
✕ 適切ではありません
聞き取れない部分を想像で埋めることは、データの捏造にあたります。逐語録では、聞き取れなかった箇所はそれと分かる形で記録します。
出典
- 問題文:「第37回社会福祉士国家試験 試験問題 社会福祉調査の基礎」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
- 正答:「第37回社会福祉士国家試験の合格基準及び正答について」(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
- 試験センター「過去の試験問題」の「過去問題利用にあたっての留意事項等」に基づき掲載しています。