多言語の
申し送りノート

ふりがなを手で書かなくていい申し送りノート ― 多言語対応の業務アプリを、AIと16日で作った記録 ―

2026年8月27日から9月11日までの実際の記録(315のコミットと更新履歴から)

介護の現場には、勤務の交代のたびに書いて読む「申し送りノート」があります。これを、外国籍の同僚も読めて、書けるノートに作り替えたのが、この記録のアプリです。

作り始めてから16日(手を動かしたのは13日)で、ノートは施設の16ユニットで使える形になりました。本文の漢字にはふりがなが付き、介護の言葉にマウスを載せると5つの言語で説明が出ます。利用者の名前を打てば、記録にはコードだけが残ります。

作ったのはAI(主に Claude Code)で、私はコードを1行も書いていません。私がしたのは、現場で見たことを日本語で伝え、できた画面を見て「ここが違う」と言うことです。

うまくいった話だけではなく、79人の利用者が別のユニットの名簿に紛れ込んだ事故も、そのまま残します。

目次

はじめに ― 「アプリで何とかなりませんか」

相談は、ノートに手で書き込まれた、ふりがなから始まりました。

これまで私は、施設の中で使う業務アプリをいくつか作ってきました。回覧の押印を画面で済ませる「回覧はんこポン」や、ショートステイの部屋割りを組む「居室割当」などです。「アプリのことなら、あの人に聞けばいい」ということは、職員の間にある程度知られていました。

ある日、20代前半の介護スタッフから相談を受けました。

外国籍のスタッフさんが、申し送りノートを読みにくそうにしています。自分からは書こうとしません。アプリで何とかなりませんか
出典:現場の職員の発言(記憶による要旨)

その職員は、ノートに書かれた漢字のすべてに、手書きでふりがなを振っていました。毎日です。

ふりがなのおかげで、ノートは確かに読みやすくなっていました。けれど、振る人の手間は毎日かかりますし、振り終わるまでは読めません。急ぎの連絡ほど、ふりがなが追いつきません。読めないから書かない。書かないから伝わらない。連絡の抜けは、実際に起きていました。

相談の中身を、アプリの機能に置き換えると次のようになります。

現場の困りごとアプリでの答え
漢字が読めない本文と返信の漢字に、自動でふりがなを付ける(パソコンの中だけで処理する)
介護の言葉が分からない用語集の言葉にマウスを載せると、読みと説明を5つの言語で出す
文の意味がつかめない選んだ文だけを、ボタンを押したときに翻訳する
日本語で書くのが不安母語で書いて「日本語へ」を押し、読み直してから書き込む
ふりがなを手で振る手間振らなくてよい
読んだかどうか分からない読んだ人が「印」を押す。自分がまだ押していない申し送りを一覧で出す

16日間のかたち

日ごとのコミット(保存した仕事の区切り)を並べると、大きな山が4つあります。

日付コミット主な出来事
8月27日5同時に書いても消えない仕組みを決めて、確かめる
8月28日41データ・画面・配布を一気に作り、画面を何度も作り直す。翻訳を足す
8月29日2記入欄を小さくして配る
9月1日43自動ふりがな。翻訳の不具合の修正。版番号の表示。利用者名のコード化
9月2日72つのユニットで同じノートを使う。背景の濃さを調整できるようにする
9月3日16職員の選び方と、押印できる人の範囲を整える
9月4日66大きなファイルの分割とテストの書き直し。拡大表示。母語で書いて日本語へ。4言語のマニュアル
9月5日8名簿の在籍区分。取り消した申し送りの押印の締め切り
9月7日14自動で新しい版が入る仕組み。階とユニットを選ぶ最初の画面
9月8日5自動テストの見張り。問題が起きたときの記録
9月9日618組を一度に作成。ショートステイとの連携。79人の事故と修正。写真の添付
9月10日30介護用語の吹き出し。用語集の画面と追加。2つのユニットの便箋を追加
9月11日17用語の説明の総点検。となりのユニットの名前もコード化。写真の貼り付け。「背景作成中」の透かし

山は 8月28日(作る日)9月1日(読めるようにする日)9月4日(作り直す日と、書けるようにする日)9月9日(広げる日) です。9月6日は1本もありません。

8月27日 ― 最初に「変えてはいけないこと」を決めた

機能を作る前に、記録が消えない仕組みを確かめました。

このノートには、ふつうのアプリの作り方がほとんど使えない条件がありました。

いちばん先に確かめたのは、2台が同時に書き込んだら、どうなるかでした。

1つのファイルを開いて、書き足して、保存する。ふつうはこう作ります。でもこの作り方では、2台がほぼ同時に保存した瞬間に、先に保存したほうの書き込みが消えます。どちらのパソコンにもエラーは出ません。消えたことに、誰も気づきません。

そこで、1つの操作を、新しいファイル1つで表すと決めました。申し送りを書けば1ファイル。印を押せば1ファイル。印を取り消すときも、元のファイルを消すのではなく「取り消した」というファイルを1つ足します。ファイルを足すだけなら、何台が同時に書いても、誰の書き込みも消えません。

排他制御の方式決定と検証(追記専用+イベントファイル)
出典:8月27日のコミットメッセージ
押印の取り消しを追加(押した事実も取り消した事実も残す)
出典:8月27日のコミットメッセージ

同じ考え方で、削除の機能は作らないとも決めました。申し送りは、事故が起きたときに読み返す記録です。間違いの訂正も、取り消しも、あとから経過が追える形で残します。

8月28日 ― 1日で形にして、何度も戻した

作って、見て、「違う」と言う。その往復で、この日だけで41回の保存がありました。

この日、記録を読み書きする土台、20秒ごとに変わったところだけを読み直す仕組み、書きかけを預かる仕組み、そして画面(ノート・押印・返信・訂正・検索・設定)と配布の一式を、1日で作りました。

実装は速く進みました。そのぶん、画面の見せ方は行ったり来たりしました

見開きめくりをやめ、縦スクロールで読み進む方式に戻す
出典:8月28日のコミットメッセージ

頭の中で考えた「紙のノートらしさ」と、実際に画面でめくってみた感じは、作って動かすまで一致しませんでした。

細かいところも、この日に決まったものが多くあります。返信はスレッドのように申し送りの下へぶら下げる。押印は、書いた人の名前の隣の「」ボタン。まだ押していない印は朱色で塗る。書いた職員の名前は名札のように目立たせる。

同じ日の午後には、選んだ文をGeminiで翻訳する機能も入れました。外へ出る3つのうちの、最初の1つです。

夕方には、実際の記録を架空の名前と内容に置き換えた見本のデモと、画面写真つきの操作マニュアルまで用意して、その日のうちに現場へ見せられる状態になっていました。

9月1日 ― 手書きのふりがなを、アプリが振る

相談のきっかけだった仕事を、まずアプリに任せました。

本文と返信の漢字に、自動でふりがなを付けるようにしました。ヘッダーの「ふりがな」を押すと、漢字の上に赤い字で読みが出ます。

読みを付ける部品(漢字の読みの辞書)はアプリに同梱していて、パソコンの中だけで処理します。本文を外へ送ることはありません。介護の言葉は一般の辞書では読み違えるものが多いので、介護用語の辞書も重ねています。

読みが違うときは、その箇所をダブルクリックして直せます。直した読みを辞書に登録すると、全部のパソコンに効きます。登録も、共有フォルダへファイルを1つ足す形です。

同じ日に、翻訳の不具合も見つかりました。ミャンマー語に訳すと、別の言語の文字が混ざることがあったのです。混ざった文字を見つけたら、一度だけ訳し直すようにしました。

この日から、画面に版番号と「更新情報」を出しています。新しい版で初めて開いたときに、何が変わったかを職員向けの言葉で知らせます。直すたびに版を上げて共有フォルダへ配る、というリズムはここから始まり、9月1日だけで 0.2.0 から 0.2.15 まで進みました。

名前を打ったら、コードになる

記録に本名を残さない。そのための入力の仕組みに、いちばんこだわりました。(9月1日〜9月11日)

申し送りは、共有フォルダに置かれ、事故のときには読み返され、翻訳の場面では外へ送られることもあります。本名を書けば、本名はそのすべてに付いていきます。

そこで、本文には本名ではなく「表示コード」を書くと決めました。ユニット名、居室番号、名前の頭文字を組み合わせたものです(架空の「星空 花」さんがAユニットの101号室なら A101HH。この記録では、ユニットの名前を「A・B」のような記号に置き換えています)。本名とコードの対応は、設定の「利用者」の画面だけで管理します。

とはいえ、忙しい職員に「コードで書いてください」と頼んでも、守れる決まりにはなりません。そこで、いつもどおり名前を打てば、アプリが自動でコードに置き換えるようにしました。

名前の書き方は人によって違います。次の書き方を、すべてパソコンの中で照らし合わせます。

迷うときは、アプリが決めません。 同じ名字の方が2人いるとき、職員と同じ名字のとき、ひらがなだけで普通の言葉かもしれないとき(「今井(いまい)さん」がいても「ただいまいらっしゃいません」は置き換えない)は、「101号室(A101HH)」のような居室付きの候補を出して、職員に選んでもらいます。候補のボタンには本名を並べません。

日本語入力の変換中には置き換えません。変換の途中で文字が変わると、打てなくなるからです。確定したあとと、保存する直前に置き換えます。

さらに、画面で置き換えたあと、保存する直前にもう一度、アプリ本体の側で名簿を読み直して確かめます。共有フォルダにつながらない間に預かった書きかけを、あとで送るときも同じです。迷うものが残っていれば、送らずに手元に残します。

この仕組みは、あとから2回直しています。

9月9日
80人を超える名簿では、1文字打つたびに引っかかる感じが出ていました。打つたびに全員ぶんの書き方の揺らぎを作り直していたのが原因で、名簿が変わらない限り作り直さないようにしたところ、1回87ミリ秒が2ミリ秒になりました
9月11日
となりのユニット(2つで1組の協力ユニット)の利用者のことを書くと、その方の名前は本名のまま残っていました。置き換えの対象を、自分のユニットだけでなく組の全員に広げました

9月2日〜5日 ― 2つのユニットで使い、壊れない形に直す

機能を足す日と、作り直す日を分けました。

9月2日から、試験運用をしていたユニットと、そのとなりのユニットが同じノートを切り替えて使う形にしました。記録は同じ保存先に置き、1件ごとに「どちらのユニットの記録か」を持たせます。職員を選ぶ画面はユニットごとに行を分け、押印できるのはそのユニットの職員に限りました。

この時期に、確認の手順の落とし穴も1つ見つかりました。アプリを実際に起動して通しで確かめる検査(smoke)が、アプリが起動したままだと、1つも検査しないまま「成功」を返していたのです。同じアプリを2つ同時に開かないための鍵が、検査そのものを止めていました。成功に見える失敗です。手順の最初に「アプリを全部閉じる」を書き足しました。

9月4日は、この16日でいちばん多い66回の保存がありました。そのうちの大きな仕事は、機能を足すことではなく、作り直すことでした。

ノート画面(note.js 1847行)を役割ごとの7つの部品へ分割する
出典:9月4日のコミットメッセージ

9月10日にも同じことをしています。1,614行のファイルと1,321行のファイルを、それぞれ6つに分けました。どうしても2か所に書くしかない決まりは、食い違ったらテストが止まるようにして、機械に見張らせています。

9月4日〜5日 ― 「書こうとしない」に答える

読めるようになった次は、書けるようにする番でした。

読む手助けは、ふりがなと翻訳でひとまず形になりました。残っていたのは、相談のもう半分、「自分からは書こうとしない」です。

そこで、母語で書いてから、日本語にして記録する機能を作りました。

記録に残るのは、読み直した日本語だけです。母語の原文は保存しません。送る前に、利用者の名前はコードに置き換えます。

書く道具も整えました。

ほかにも、申し送り1件を画面いっぱいの大きな字で開く「拡大表示」を足し、操作マニュアルを日本語・ベトナム語・インドネシア語・ビルマ語の4つで作って、紙で配れるPDFにしました。

翻訳に使うAIは、ふだんは軽いモデル、うまく訳せないときだけ上のモデルを使うようにしています。毎日たくさん押されるボタンなので、施設で長く使い続けられることを優先しました。

16のユニット、16の便箋

堅苦しいだけの道具にはしたくありませんでした。

業務のアプリは、どうしても灰色の四角が並ぶだけの画面になりがちです。けれど、このノートを毎日開くのは現場の職員です。私はこのアプリで、AIやアプリ作りを、自分たちにも手の届くものだと感じてほしいと思っていました。

施設には16のユニットがあり、どれも木や果物にちなんだ一文字の名前が付いています。そこで、ノートの背景を、そのユニットの名前に合わせた水彩の便箋にすると決めました。ページの区切りにも、そのユニットの絵を並べます。

背景の水彩は、画像を作るAI(ChatGPT や Gemini)で作った絵です。区切りの絵も、半分はAIで作り、半分は手元にあった絵を使いました。アプリのアイコンは、開いたノートの左右のページに、最初の2つのユニットにちなむ実を描いたものです。

背景は、ノートを見たまま濃さを10〜100の間で変えられます。文字が読みにくいと感じる人は薄くできますが、完全には消えないようにしてあります。

16ユニットのうち、専用の便箋ができているのは、いまのところ4ユニットです。残りのユニットのノートには、9月11日から「背景作成中」の文字を薄く透かしで入れています。絵ができしだい、1つずつ差し替えます。

9月7日〜8日 ― 1つのユニットから、施設全体へ

配り方を変えないと、16ユニットには広げられませんでした。

それまでは、新しい版ができるたびに、各パソコンを1台ずつ回って入れ直していました。16ユニットに広げたら、とても回りきれません。

9月7日、起動するたびに新しい版を取りに行く仕組み(ランチャー)に切り替えました。共有フォルダの決まった場所に新しい版を置けば、各パソコンは起動したときにそれを取ってきて、次に開いたときから新しい版になります。使っている最中に足元を差し替えることはしません。困ったときは前の版に戻せます。

v0.2.52: 配布をランチャー方式にする(更新のたびに各PCを回らない)
出典:9月7日のコミットメッセージ

同じ日に、最初の画面から階とユニットを選んで、応援に入った先のノートも開けるようにしました。書きかけの下書きは、書いた組のノートにだけ出ます(応援先のノートに紛れ込まないように)。職員の名簿は、施設全体で1つにまとめられるようにしました。

9月8日には、プログラムを保存するたびに、自動でテストが走る見張り(GitHub Actions)を付けました。テストがプログラムのどこまでを確かめているかにも下限を決めていて、下回ると止まります。あわせて、思わぬ問題が起きたときに共有フォルダへ記録を残す仕組みも入れました。記録には、本文や利用者の名前は書きません。

9月9日、新しい組(2つのユニットで1組)を同時に作ると片方が失敗する不具合を直して、8組・16ユニットぶんのノートをまとめて用意しました。

ショートステイという難所

登録は80人以上。その日によって、泊まる人も部屋も変わります。(9月9日)

いちばん苦労したのが、ショートステイ(短期入所)のユニットです。

ふつうのユニットは10人前後で、顔ぶれも部屋も決まっています。ショートステイは違います。登録している人は80人を超え、今日泊まる人は日によって変わります。 部屋も決まっておらず、自分のユニットの部屋が埋まれば、ほかのユニットの空いている部屋(空床)を借りることもあります。

ふつうのユニットと同じ作りでは、どれも回りませんでした。1つずつ解いていきました。

1. 80人を手で登録できない
私が以前作った「居室割当」(ショートステイの部屋割りのアプリ)には、利用者の一覧があります。これを読み込んで、ノートの名簿にそのまま登録できるようにしました。部屋割りのアプリは読むだけで、何も書き込みません。登録の前に「登録する人」と「取り込めない人(理由つき)」を見せ、何度押しても二重には登録しません。その後は30分ごとに見比べて、増えた人は自動で登録し、部屋割りのアプリで終わった人は「終了」にします(戻すのは人が確かめてから)。
2. コードに部屋番号を入れられない
部屋が変わるので、「ユニット名+部屋番号+頭文字」の決まりが使えません。頭文字2つ(KTのような形)にしたら、誰のことか思い出せませんでした。名字3文字+名前3文字のローマ字にしました(架空の「星空 花」さんならショHOS-HAN)。頭の「ショ」はショートステイの意味です。SSにすると頭文字と紛れるので避けました。
3. 80人のコードから探せない
記入欄に「名前・コードで絞る」欄を付けました。名前・読み・ローマ字・コード・部屋のどれで打っても絞れます。
4. 今日の人だけにしたい
記入欄に日付を付けました。日付を入れると、その日に泊まる人だけが並び、その日の部屋番号も添えられます。空にすれば全員に戻ります。
5. 空床の人を分けて見たい
申し送りでは「今日うちの部屋にいる方」と「よその空床にいる方」を分けて確かめたい、という声がありました。日付の下に「空床SS」ボタンを付け、押すとほかのユニットの部屋を借りている人だけが、借りている部屋の番号付きで並ぶようにしました。

79人が、別のユニットの名簿に入り込んだ

ショートステイのユニットは、となりの本入所のユニットと2つで1組です。本入所のユニットのノートを開いたままにしていると、30分ごとの自動の取り込みが「いま開いているユニット」を登録先にしてしまい、ショートステイの名簿79人が、本入所のユニットの名簿に登録されていました。 本来10人の名簿が、89人になっていました。

その日のうちに、次のように直しました。

直したあとも、11人が外せずに残りました(現場で見つかりました)。となりのユニットの申し送りに同じコードがあったため、「申し送りに出てくる人」と判定されていたのです。調べる範囲を「そのユニットの申し送り」だけに直し、本入所のユニットの名簿は本来の10人に戻りました。外した79人のファイルと、誰がいつ外したかの記録は、いまも残っています。

同じ日には、ほかにもデータの思い込みが見つかっています。

厚生労働省の用語集を読み込む

国が公開している教材を、ノートの中の辞書にしました。(9月9日〜9月11日)

厚生労働省は、外国の人が介護の現場で使う専門用語を学ぶための「外国人のための介護福祉専門用語集」を公開しています。14の言語の版がPDFで配られていて、正誤表もあります。

厚生労働省のページ「外国人のための介護福祉専門用語集」。「外国人の方が介護現場で働くときに使う、介護福祉分野の専門用語を学ぶための教材です。」という説明の下に、英語版・クメール語版・インドネシア語版・ネパール語版・モンゴル語版・ビルマ語版・ベトナム語版・中国語版・タイ語版・ウズベク語版・ベンガル語版・タガログ語版・ヒンディー語版・ウルドゥー語版のPDFへのリンクと、正誤表(全言語共通)へのリンクが並んでいる。
厚生労働省「外国人のための介護福祉専門用語集」のページ厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28131.html)を撮影

このうち、英語・ベトナム語・ビルマ語(ミャンマー語)・インドネシア語の4つの版を使いました。PDFから見出し語・読み・訳を読み取り、正誤表の訂正も反映して、約1,200語の辞書にしています。訳は公式のものを使い、PDFの中の改行だけを整えました。

そこへ、現場の記録によく出るのに載っていない言葉を足しました。体重、面会、夜勤、車椅子、おむつ交換、訪問介護、要介護認定などです。同じ意味の別の書き方(「バルンカテーテル」、褥瘡の略の「デクビ」など)も、同じ説明にひも付けています。いまは1,370語です。

AIが書いた説明を、総点検した

厚生労働省の用語集には訳語はありますが、やさしい日本語の説明がない語も多くありました。そこでAIに下書きを作らせ、日本語の説明と、4つの言語の意味の説明を付けました。

9月11日、それを総点検しました。見つかったのは、たとえば次のようなものです。

職員が、用語集に言葉を足すこともできます。足した言葉は共有フォルダへ1件ずつ追記され、全部のパソコンに効きます。ほかの職員が中身を確かめるまでは「未確認」の印が付きます。同梱の言葉とぶつかる言葉は足せません。説明の下書きをAIに作らせるときに送るのは、見出し語と読みだけです。

書いた言葉に、解説が出る

分からない言葉を、その場で、自分の言葉で。

ノートの本文と返信の中に用語集の言葉があると、その言葉にピンクの点線を引きます。マウスを載せると小窓が開き、読み(ひらがな)と日本語の説明、その下に5つの言語のボタンが並びます。

ふりがな、介護用語のピンク、利用者コードの黄色は、1つの文の上に重ねて出せます。

コードにマウスを載せると、名前が出る

コードで守った本名を、読む人にだけ、その場で見せる。

本文をコードにすると、今度は読む側が困ります。「A103MH って、誰だっけ」。長くいる職員は覚えていても、新人や、応援で来た職員には分かりません。部屋番号の入らないショートステイのコードなら、なおさらです。

そこで、本文の中の利用者コードを黄色で示し、マウスを載せると名前が出るようにしました。

最初(9月9日)はショートステイのユニットだけで始め、9月11日にすべてのユニットへ広げました。となりのユニットの方のコードにも出ます。

写真やファイルも、記録の作法で

「消えない記録」の決まりは、添付にもそのまま当てはめました。(9月9日〜9月11日)

申し送りと返信に、写真・PDF・Word・Excel・PowerPoint を付けられるようにしました(1件に5つまで)。

9月11日には、写真が付けられなくなっていた不具合を直し、コピーした写真や画面の切り取りを Ctrl+V で貼れるようにしました。

16日間を数字で

項目
期間2026年8月27日〜9月11日(16日間。作業したのは13日)
コミット(保存した仕事の区切り)315
0.2.0 → 0.2.94
自動テスト629件
介護用語1,370語
説明の言語5(日本語・英語・ベトナム語・ミャンマー語・インドネシア語)
使えるユニット16(2つのユニットで1組、8組)
同じノートを開くパソコン最大10台
専用の便箋があるユニット4(残り12ユニットは「背景作成中」)
私が書いたコード0行

この16日で分かったこと

次に何かを作るときに、そのまま使える形にしてあります。

手書きの工夫は、そのまま要件になる
手書きのふりがなは、「ひらがななら読める」「毎日要る」「振るのに時間がかかる」を全部語っていました。何を作ればよいかは、現場の人がすでに手でやっていました
現場の一言が、直し方を決める
「名前が矢印で隠れる」「部屋が全員SSで選べない」「ボタンが2行になって欄が高い」。どれも短い一言で、どれもそのまま直し方になりました
消さない設計は、不便ではなかった
取り消しも訂正も、外すことさえも、「1つ足す」で表せました。そのぶん、あとから経過を読み返せます
守れない決まりは、機械に任せる
「本名を書かない」は、人に頼むより、打った瞬間に置き換えるほうが確かでした。機械が迷うときだけ、人に聞きます
データの思い込みは、テストでは見つからない
79人の事故も、「-」と「_」の1文字も、テストが全部通っている状態で起きました。見つかったのは、本物のデータで動かしてからです
AIが書いた説明は、人が確かめるまで下書き
「Pトイレ」に脈拍の説明が出ました。便利さと正しさは別のことです
遊び心も、使ってもらうための部品
ユニットごとの便箋は、見た目の飾りではなく、「自分たちのノート」と感じてもらうための入口です

この記録の作り方と、限界

分からないことは、分からないまま書いてあります。

日付と出来事は、プログラムの保存の記録(gitの315のコミット)と、アプリの中の更新情報(職員向けの説明)から拾いました。数字は2026年9月11日時点のものです。

相談の場面は、私の記憶によります。言葉は要旨です。

画面の図は、公開用の見本(デモ)から撮りました。利用者の名前・職員の名前・記録の中身は、すべて架空です。実際の画面とは、名簿や記録が違います。デモでは、ふりがなを付ける言葉も一部に絞っています。

施設の名前と、ユニットの名前は伏せています。ユニットは「A・B」のような記号で書き、便箋の絵の説明でも名前にあたる果物や木の名前は出していません。

用語の訳と説明は、母語で話す人の確認がまだです。16ユニットのうち、専用の便箋があるのは4ユニットです。

あの職員が毎日ふりがなを振らなくてよくなること。外国籍の同僚が、自分から申し送りを書き込むこと。このノートの目標は、最初の相談の中にすべてありました。

コードは読めなくても、ノートは見られます。手書きのふりがなを見て、「これをアプリにやらせよう」と思えれば、作るものは決まります。あとは、できた画面を見て、違うと思ったところを理由を添えて言う。16日間でしていたのは、ほとんどそれだけでした。

ノートは、いまも毎日書き込まれ、毎日直されています。